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時評コラム

小山昇の「こころ豊かで安全な経営とは何か」

「経営の見える化」はなぜ必要なのか

2009年10月13日

「教える」だけでは人材は育たない

 企業資産を指して、俗に「ヒト・モノ・カネ」といわれます。このうち最も大切なのは「ヒト」です。モノ、すなわち売れ筋の商品やサービスは、ライバルも簡単に手に入れることができる。あるいは真似することができる。カネも、銀行に融資を依頼すれば調達することは可能です。つまり「モノ」「カネ」では、ライバルとは差別化できない。

 その点、「ヒト」は違います。人材は一朝一夕には育たない。お客様に喜ばれる対応力や、的確な提案をする商品知識などは、そう簡単には身に付くものでもありません。これは強力な差別化要素です。お客様は商品価格「だけ」で購入を決めるのではないからです。あの営業担当者は感じがいいとか、この配達スタッフは親切だといったことを総合的に加味して購入するのです。

 景気が落ち込むと価格競争になりやすいのですが、最後の勝負は結局「ヒト」に尽きます。つまり「不況だからモノやサービスが売れない」は、ある面では真実ですが、本当は「不況になる前に人材育成に投資しなかった」から売れないのです。中小企業は、景気がどう、消費者動向がこうといった外的要因が会社の好不調に与える影響はきわめて小さい。むしろ、企業文化や社内の雰囲気、あるいは人材力といった内的要因こそが大きく業績に影響します。

 だからこそわたしは人材こそ我が社の最大の財産として捉え、惜しみなく教育投資をしてきました。そしてそれは一定以上の効果を挙げてきたとも思っていました。現に、未曾有の不景気が続くここ数年でも、我が社の業績はずっと右肩上がりです。

 しかし、最近になって、わたしの教育方針が次第に変化していることに気づきました。「教える」ことばかりに熱心であった昔より、現在はいつの間にか「育てる」ことが中心になっているのです。

 なるほど、商品やサービスに関する知識はマスターした。お客様の情報も覚え、ビジネスマナーも会得した。それはそれで社会人として大切な資質ですが、しかし「それだけ」では、いわば融通の利かない受験秀才のようなものに過ぎません。我が社に本当に必要なのは、臨機応変に世の中を渡っていく智恵を身に付けた人材です。

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