このページの本文へ
ひと・話題

from Forbes.com

未来研究 究極の問い
「人工知能は人類を超えるか」

2009年10月9日

原文タイトル:Calling All Transhumanists
原文掲載サイトwww.forbes.com
著者名:Courtney Boyd Myers
原文公開日時:2009年10月2日

 世界がシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するのはまだ先のことだが、年次会議でフューチャリストと「マンマシン」の夢が結びつく。

 技術に関するフューチャリスト(未来研究者)は「シンギュラリティ」についての話を好む。「シンギュラリティ」とは、技術の進歩が急速に進み、人工知能が人間の知能と融合しこれを超え始める時点のことを言う。フューチャリストにとっては、キリスト教原理主義者にとっての「携挙」(注:地上のキリスト教徒が不死となりキリストに出会う瞬間である)と同じような意味を持つものである。

 こうした事態を歓迎、あるいは逆に恐れる人々が、今週末にニューヨーク市で開催された第4回「シンギュラリティ・サミット」に集結した。サミットで発言したのは、著述家でありプログラマーのRay Kurzweil氏、斬新な検索エンジンAlphaの創始者Steve Wolfram氏、アンチエイジング科学の専門家であるAubrey de Grey氏など一部の著名なテクノロジー予言者らである。また映画「マトリックス」シリーズの着想のきっかけとなった思想を持つオーストラリアの哲学者David Chalmers氏、そしてPayPalの共同創始者であり、今回のサミットを主催した人工知能のためのシンギュラリティ協会(Singularity Institute for Artificial Intelligence)に数十万ドル規模の寄付を行ったことのあるPeter Thiel氏などの発言もあった。昨年、カリフォルニア州サンノゼで行われたサミットは、好奇心にあふれた1000人もの大学関係者や起業家らの関心を集めた(2007年サミットの本誌記事はこちら)。

【関連記事リンク】
In Pictures: 20 Social Media Blunders
(ソーシャルメディア 22の落とし穴)
In Pictures: Powering Up Your Smart Phone
(スマートフォンを賢くする)
In Pictures: 10 Phone Apps Your Mother Will Hate
(母親がいやがる 10の携帯アプリ)
Top Tips: 16 Must-Try Marketing Techniques
(試すべし! 16のマーケティング技)
In Depth: Five Ways To Put A Price Tag On A Start-Up
(スタートアップを評価する5つの方法)

 同協会のMichael Vassar会長の予測では、2040年までに「シンギュラリティ」が起きる可能性は25%弱、2060年までに起きる可能性は70%あるという。Vassar氏は、この一線を超えた途端、すべてがこれまでとは異なるものとなり、「シンギュラリティ後の世界に暮らす人間は、現代世界のクラゲのように無力な存在になるでしょう」と語る。ただし会長の予想するこの確率は、核戦争が発生したり、あるいは世界全体が原始社会に回帰したりすることによって、世界の技術力が急速に衰退する可能性が考慮に入っていない。

 Kurzweil氏を含め、会長のもとで動くシンギュラリティ協会の6名のスタッフは、「不確定な未来プロジェクト」「世界的破滅リスクプロジェクト」「経済と人工知能」などの論文を発表している。また将来の技術路線を予測して、核戦争や地球温暖化など世界的な大惨事が発生する可能性を割り出すソフトウエアを開発した。

 シンギュラリストは、楽観的な者と悲観的な者の2つのグループに分かれる。Kurzweil氏のような楽観主義者が期待しているのは、人間の知能が脳インプラントによって高められ、記憶力と感覚が強化されて、問題を迅速かつ非常に正確に解決できる時代に暮らすことだ。

 Vassar氏のような悲観主義者は、敵対的な人工知能の登場が人類にとって脅威となると考えている。そうした人工知能は人間を隷属させようとするだけでなく(映画「マトリックス」を思い出すといい)、計算をエンドレスで続けるため人間の脳物質を利用するというのである。まさに我々人間が過去60年間にわたってコンピューターを使い続けてきたのと同じように。

 Vassar氏と協会の人々は現在、マトリックスのような未来が実現せぬよう努力しているという。協会研究員のEliezer Yudkowsky氏は道徳心を持つように作られた人工知能(AI)を指す「フレンドリーAI」という新語を造り出した。協会の主な目標のひとつは、この「フレンドリーAI」を作るよう協会外の科学者らに働きかけることである。(「AIリポート」コーナーのVassar会長著「機械の心」を参照

 シンギュラリティとそれを取り巻くカーゴ・カルト(注:大幅に進んだ文明との接触を基にした宗教活動)への熱狂について、コンピューター科学者やエンジニアの多くは極めて懐疑的である。我々人間を取るに足らない存在とするほどまでに技術を複雑にする能力は、当の人間にはないと考える。また経済的理由から見ても、技術の進歩とコンピュータ・ハードウエアのパフォーマンスが、シンギュラリティに到達できるほどのスピードに達することは絶対になさそうだという。

 「シム」シリーズのゲームのクリエーターであるWill Wright氏は、人間が持ちうるのと同じような知能と創造力を機械が獲得することは絶対にないと公言する。だが、いずれ機械は自ら知能を高める能力を持ち、自ら効果的な再プログラミングを行い、最終的には初めての本物のAIが、我々人間の知覚とはまったく性質の異なる、AI独特の感覚性を持つことになると信じている。

 カリフォルニア大学バークレー校のコンピューター・サイエンス・プログラム博士課程3年Ariel Rabkinさんは、技術関係者の多くがシンギュラリティを真面目に受け取っていることに疑問を呈する。「人間並みのAIの実現は非常に難しい。まだそこに近づいてすらいません」という。「バークレーに限らず、僕と一緒に学んでいる連中は人間並みのAIについて話したことすらありませんよ。はっきりさせておきますが、話の流れの中でAIのことが出てこないのではなくて、AIについて一切誰も言及しない、という意味です。考えたことすらない」。

 だがシンギュラリティは今も変わらず門外漢たちの好奇心をかき立てる。この先1年間に、ハリウッドではトランスヒューマニズム(超人間主義)をテーマとする映画が何本か封切られる。例えばJonathan Mostow監督の「サロゲート」、James Cameron監督の「アバター」、Barry Ptolemy監督の「トランスセンデント・マン」と「The Singularity is Near」(Ray Kurzweil氏の脚本)などである。現在、出版業界は厳しい状況にあるが、BetterHumans社は「H+」(「トランスヒューマニズム」の意)という新しい雑誌を刊行したばかりだ。これはトランスヒューマニズムの現状を追っていくもので、極端な技術進歩を好む読者を対象にしている。

 シンギュラリティは比較的新しい考え方なので、主に若者に受け入れられ、古い世代の教員や科学者にはカウンターカルチャー的傾向のものとして退けられる可能性はある。当年とって30歳になるVassar氏は、「私はシンギュラリストの中では古い世代の方ですよ」と語る。

 我々が生きている間にシンギュラリティが人間性を破壊することはおそらくないだろう。しかしテクノロジーが我々の役に立っているのか、あるいはそうでないのか、これを問い続けるのは有意義なことだ。

from Forbes.comは、米Forbes.comに掲載のコラムをnikkei BPnetが翻訳提携の下で翻訳して掲載しています。ビジネスやITに関する記事を中心に毎週2本のペースで掲載の予定です。

©2009 Forbes.com Inc. All rights reserved.

皆様からお寄せいただいたご意見

電子回路ではどうかわかりませんが、遺伝子操作で大脳の大きな種族を作ったり、辺縁系をいじって感情を抑えた論理的思考が得意な種族を作ったり、その程度のことなら今世紀中に実験してしまう人が出てきそうですね。「現生人類より知恵のある何か」という意味では、人工知能と同じ脅威になるかと思います(SF的には)。(Antonin)(2009年10月13日 11:45)

あなたのご意見をお聞かせください

このコメントを公開してもよい。

コメント投稿に関するご注意
  • 日経BP社は、読者の皆様からの投稿の内容につきまして、その信頼性、適法性などを一切保証いたしません。何らかのトラブルが発生した場合も、日経BP社は一切、責任を負いませんので、皆様の自己責任においてご利用ください。
  • トラブルを避けるためにも、ご自身を特定できる情報を書き込まれないことを強く推奨いたします。
  • 投稿していただいたコメントは、編集部が査読した上で公開します。即時公開はされません。また、明らかな間違いや不適切な表現があった場合、原文の意図を損なわないと思われる範囲内で変更をさせていただく場合があります。内容がふさわしくないと判断した場合、公開後でも削除する場合があります。

トップ特集企業・経営情報・通信パソコンライフ電子・機械環境建設医療時評コラム中国キャリワカひと・話題特設新刊

このページの先頭へ

本文へ戻る