(佐々木俊尚=ITジャーナリスト)
ファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇氏が著作権法違反幇助に問われていた裁判で、控訴審が7月16日に結審した。弁護側は一審から一貫して無罪を求め、検察側は一審判決の罰金刑(150万円)は軽すぎると主張し、判決の破棄を求めている。判決公判はきたる10月8日に大阪高裁で開かれる。裁判所がどのような判断を下すのかが注目される。
「著作権を侵害する行為を蔓延させて、著作権を変えるのが目的だった」
これまでの経緯を振り返っておこう。
2002年に開発されたWinnyは、暗号化されたキャッシュを中継していくことで、送信者を特定できないようにする独自の匿名化技術を備えていた。違法なコンテンツの送信を行っていた人たちからはこの技術が「警察に摘発される可能性が低い」と支持を受け、多くのユーザーを集めることになる。
しかしWinnyを使って映画やゲームのコンテンツを不特定多数に送信していたユーザー2人が、2003年秋に京都府警によって逮捕される。警察はWinny本体の暗号解読を試みて失敗したのだが、Winny上の掲示板機能であるWinnyBBSに目をつけた。このWinnyBBS上ではユーザーのIPアドレスの特定が可能で、「これから放流します」と時間を決めて違法ファイルをアップロードすることを宣言していた人物を見つけ出したのだった。
この利用者2人が逮捕された際、京都府警は金子氏を摘発する方針ではなかったとされている。後に公判で、府警の捜査官が、こう証言しているからだ。「この時は、彼を被疑者にしようという考えはわれわれには毛頭なかった。プログラム開発者と被疑者はまったく別で、プログラマーは悪くない、使った者が悪いと思っていた」。
だが利用者2人の摘発にともなって府警が金子元助手の自宅を捜索し、任意での事情聴取を行うと、金子氏は思いもよらない供述をした。「著作権を侵害する行為を蔓延させて、著作権を変えるのが目的だったんです」などと述べたのである。この発言がきっかけになり、府警側の対応が変わった。国家の法秩序に対する敵対的な意志に対しては、厳正に対処すべきだという考えが生まれたからだ。京都府警は翌2004年5月10日、先に逮捕した正犯者2人に対する著作権侵害の幇助容疑で金子氏を逮捕したのだった。