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河岸宏和
かまぼこのような歯応えのハム
私は、出張でホテルに泊まるとバイキング形式の朝食がなにより楽しみです。山盛りの生野菜サラダと、軽く温めたロースハム、カリカリに焼いたベーコンに粒マスタードを付けて、焼きたてのパンとともに食べます。おいしい朝食、特においしいハムを食べることができれば、その日1日いい仕事ができそうな気がしてきます。
しかし日本では、有名ホテルに泊まってもおいしいハムを食べることはまずできません。豚肉に、植蛋(植物性たんぱく質)、乳たんぱくなどを多量に配合したハムが出てくるのです。
本来“ハム”という食品は、豚肉のモモの部位を使用して製造したものでした。モモの部位よりおいしいロース肉を使用したハムは、最もおいしいハムでなければならないと私は思っています。
海外でハムを食べても、あのかまぼこのような歯応えのハムに出会うことはまずありません。なぜか日本(と韓国)では、植蛋入りのハムが幅を利かせています。
ハムに植蛋を使用することが悪いことだと言っているのではありません。ただし植蛋を使用したハムは“植蛋ハム”とうたうべきだと私は思います。少なくとも“ロースハム”と表示して供給することは表示違反だと思っています。
使用する肉と同じくらいの量の食品添加物
ドイツでは、ハム・ソーセージを作る職人はマイスターと呼ばれ、徒弟制度の中でハム・ソーセージの作り方を体にたたき込まれます。私もドイツ人のマイスターにハムの作り方を教えてもらったのですが、日本の作り方とはまったく違いました。
本来ハムは、使用した原料肉より出来上がりのハムの量が少なくなるものです。日本では「技術力」と称して、使用する肉の量と同じくらいの量の植蛋、乳たんぱく、卵たんぱくを肉の中に打ち込みます。また、植蛋を肉に打ち込むと肉の色があせて味も薄くなるので、着色料や調味料などの食品添加物を大量に使用します。これにより、出来上がりのハムの量が原材料の肉のなんと2倍くらいになるのです。
味をつけるための調味液を大きな注射針で打ち込まれた肉は、真空状態の容器の中をぐるぐる回転させて、肉の中に植蛋がなじむようにもまれます。日本のロースハムの表面がプリン状につるつるしているのは、植蛋が使われているからだけでなく、肉を真空状態でぐるぐるもんでいるからなのです。
ドイツで行われている、豚肉に塩、亜硝酸塩、香辛料を付けて数日間かけて塩漬が行われるハム本来の作り方とはまったく異なるものです。本来1週間掛かる塩漬がたった1日で終わってしまいます。