トップ > 松浦晋也の「宇宙開発を読む」 > 政治の目指す“日本版NASA”の落とし穴

松浦晋也の「宇宙開発を読む」テクノロジー

政治の目指す“日本版NASA”の落とし穴(1/8ページ)

安全保障分野とそれ以外は厳密な分離が必要

2009.08.28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 衆議院選挙が間近に迫り、自民党・公明党の連立政権から民主党政権への政権交代への流れができつつある中、宇宙分野では、「日本版NASA」構想という話がメディアに露出するようになった。現在の文部科学省主体の宇宙開発を内閣府の管轄に移し、さまざまな省庁に分散している宇宙行政を一本化しようというものだ。朝日新聞は8月14日付けで民主党が、宇宙行政の一本化を霞が関改革の突破口とする意向を持っていると報じた。

 この動きは、去年8月に施行された宇宙基本法に基づくものである。宇宙基本法は附則において、施行後1年をめどに宇宙開発体制の見直しを行い、かつその後も継続的に必要に応じて組織体制を見直していくと定めている。今年春には現自公連立政権が、宇宙基本計画策定にあたって、宇宙開発分野の文科省から内閣府へ移管しようとした。この時は、文科省が文教族議員を巻き込んでの大がかりな反対運動を展開した結果、「選挙も近い時点で党を割ることはできない」という河村建夫内閣官房長官の判断でペンディングとなっている。

 しかし、この「日本版NASA」というキャッチフレーズには重大な事実誤認が含まれている。アメリカの宇宙開発体制は決して米航空宇宙局(NASA)に一元化されているわけではない。特に安全保障分野では、米国防総省、国家安全保障局(NSA)などに分散している。

 むしろ、アメリカの宇宙開発体制は、2003年に宇宙三機関統合を実施する前の日本の体制に近い。「日本版NASA構想」は、アメリカの体制に勝手に幻想を抱き、その幻想に近づこうとして、かえってアメリカの体制とは異なる体制を構築しつつあるといってもいい。

 私は特に、安全保障分野と、それ以外の宇宙行政を一体化する動きに重大な懸念を感じている。活発な情報交換と情報流通によって、宇宙開発を加速することができる分野と、基本的に情報を秘匿する安全保障分野を同じ組織に一体化するべきではない。

 もしも一体化した場合、行政組織の常として、組織全体が秘匿の側に引っ張られることは確実である。そうなれば、日本の宇宙開発は自由な情報の流通ができなくなり、衰退することになる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ログイン
  • マイフォローとは?
nikkei BPnet 会員サービス
トピックを選ぶ!フォローする 自分のメディアを組み立てる! マイフォロー

ランキング一覧を見る

おすすめ情報【PR】

締切間近のセミナー