トップ > ニュース解説 > 骨抜きになった三輪バイクの要二輪免許

ニュース解説ビジネス

骨抜きになった三輪バイクの要二輪免許(3/3ページ)

2009.08.26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「安全の確保」という点でも今回の法改正は疑問

 トライクの見た目はオートバイそのものであるが、運転にあたってはヘルメット着用は義務づけられてはいない。これは今回の法改正以降も同様である。というのも、トライクの運転に必要なのは普通免許であり、普通免許は普通自動車の運転を前提にしているからだ。自動車は人の身体を保護する構造になっているのでヘルメットは必要としない、との考えに基づいているわけだ。

 とはいえトライクは、運転者の身体を保護する構造になっていない。自動車には義務づけられているシートベルトもない。高速道路での最高速度は80km/hに制限されているとはいえ、安全面での規制は緩い。これではいかに安定性に優れるトライクとて、万一の際には二輪以上に重篤な事態になりかねない。現に、2005年には走行中のトライクが横転し、後部座席に乗っていた主婦が死亡、運転していた主婦も意識不明の重体になる事故が起きている。2人ともヘルメットは着用していなかった。

 三輪自動車の事故を防ぎ、もし事故が起きても被害を最小限におさえることが目的ならば、今回の改正でトライク全体が対象になってもおかしくはない。それが中途半端に終わっているのは、免許の問題だ。

 4輪の自動車と2輪のオートバイの中間に位置する三輪自動車は、従来の免許制度の範疇では把握できないものだった。今回の改正でも普通免許か自動二輪免許か二者択一を迫られ、普通免許だけで運転している人の多い現状から普通免許に落ち着いた感じである。その結果、大半の三輪自動車は対象からはずれ、ヘルメット着用も義務化されずに安全面で問題を残すことになった。この点でも、いったい何のための改正だったのか疑問は残る。

 ただし、安全面は規制してもらって実現するものではない。安全は自分で確保するのが大前提である。実際、トライクのオーナーの多くは自発的にヘルメットを着用している。義務づけられていないからといってヘルメットを拒否するのではなく、自らの安全のためにヘルメットの着用を実践する姿勢こそが重要だ。乗り方にしても免許があるから安全なわけではない。個人の運転姿勢に寄るところが大きい。そうした自覚が乗る側にないかぎり、いくら道交法を厳しくしたところで事故はなくならない。道交法改正の中途半端さを、自ら安全を守る意識を高めることのきっかけにしたいものだ。

前屋 毅(まえや・つよし)
前屋 毅(まえや・つよし)

 1954年生まれ。『週刊ポスト』記者を経てフリージャーナリストに。企業、経済、社会問題をテーマに執筆している。著書に『全証言 東芝クレーマー事件』『安全な牛肉』(いずれも小学館文庫)、『成功への転身——企業変質の時代をどう生きるか』(大村書店)、『ゴーン革命と日産社員——日本人はダメだったのか?』(小学館文庫)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)などがある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

あなたの意見を表明してみませんか? ログイン or 会員登録 でコメント投稿ができます。

コメント投稿に関するご注意
日経BP社は、読者の皆様からの投稿の内容につきまして、その信頼性、適法性などを一切保証いたしません。何らかのトラブルが発生した場合も、日経BP社は一切、責任を負いませんので、皆様の自己責任においてご利用ください。
トラブルを避けるためにも、ご自身を特定できる情報を書き込まれないことを強く推奨いたします。
投稿していただいたコメントは、編集部が査読した上で公開します。即時公開はされません。また、明らかな間違いや不適切な表現があった場合、原文の意図を損なわないと思われる範囲内で変更をさせていただく場合があります。内容がふさわしくないと判断した場合、公開後でも削除する場合があります。
  • ログイン
  • マイフォローとは?
nikkei BPnet 会員サービス
トピックを選ぶ!フォローする 自分のメディアを組み立てる! マイフォロー

ランキング一覧を見る

おすすめ情報【PR】

締切間近のセミナー