(伝農 浩子=フリーライター)

 子守唄や学校の授業で親しんできた童謡・唱歌()。アメリカ出身のグレッグ・アーウィンさんは、その美しい歌の世界に引かれ、100曲以上に英語の歌詞を付けて歌っている。美しい曲とその背景にあるストーリーに、日本人以外の人たちも心を動かされるという。

童謡との幸せな出合い

 シンガー&ソングライターであり、声優や司会などでも幅広く活躍しているアメリカ人エンターテイナー、グレッグ・アーウィンさん。童謡と出合ったのは今から15年前、1994年のことだ。クラブなどでオリジナルソングやスタンダードナンバーを歌ったり、声優の仕事をしていたころだった。ある時、レコード会社のプロデューサーが、訳詞を頼んできたのだ。

グレッグ・アーウィンさん(Greg Irwin)
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 童謡を愛し、教材用に英語版の童謡アルバムを作ろうとしていたそのプロデューサーは、教材ではあるが、直訳しただけではない、生きた美しい英語の詩をメロディに乗せたいと考えていた。作詞もするアーウィンさんなら、詩の世界観を残し、英語圏の人たちが聴いても感動できる詩にしてくれるだろうと期待した。

 「最初に訳したのは『赤とんぼ』『故郷』とか。童謡なんて知らなかったから、とにかく歌詞とテープをもらって聴いてみた。でも、曲を流していて思い出したよ。この2曲は、聴いたことがあるって」

 アーウィンさんが初めて日本に来たのは、演劇を専攻していたハワイ大学在学中の1980年代中頃だ。2年半ほどを日本で過ごし、滞在中にクラブなどで、「カントリーロード」といったアメリカのポピュラーソングやスタンダードナンバーを歌っていた。

 そんなある時、酔っぱらった客がアーウィンさんに言ったという。「こういう歌を歌えなきゃだめなんだよ」。そして歌い出したのだ。「う〜さ〜ぎ〜追〜いし、か〜の〜山〜」。「故郷」だった。まだ、日本語もあまり知らないころだが、その出来事が強く心に残っていた。

 また、ある時、何気なく見ていたテレビで日本人のオペラ歌手が歌っていたのが「赤とんぼ」。もちろん、歌詞の意味など分からなかったが、美しい曲に強く引かれた。

※大まかに言うと、「唱歌」は子供の音楽教育のために国主導で既存の邦楽曲や外国曲に日本語の歌詞を付けたり新たに作られた歌。文化人が自発的に生み出したものが「童謡」だが、ここでは便宜的に童謡・唱歌を合せて童謡と呼ぶことにする。

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