(前屋毅=ジャーナリスト)
学費が払えないために退学を余儀なくされたり、奨学金で卒業したものの経済環境の悪化で返済ができないケースが増えている。そうしたなかで、返済義務のない奨学金の制度導入が注目されている。しかし、なぜか肝心の文部科学省だけが積極的な動きをみせていない。返済義務のない奨学金制度をめぐる状況をレポートする。
2008年の授業料滞納者は前年比3倍の伸び
教育費の問題が深刻な状況になっている。日本私立中学高等学校連合会による「私立高等学校における授業料滞納状況」によれば、2008年の授業料滞納者は2万4990人(09年12月末)と、07年度末の7827人を大きく上まわっている。授業料滞納を理由に卒業式後に学校側が滞納者の卒業証書を回収するという事態も頻発した。
大学生などを対象に奨学金の貸与事業を行なっている独立行政法人・日本学生支援機構が今年(2009年)6月に発表したところによると、奨学金の返済猶予を認める対象者を従来の2.5倍にあたる10万人に拡大するという。それだけ返済できない収入状況にある対象者が急激に増えていることになる。「100年に1度」ともいわれる大不況が教育現場を直撃している。
そうしたなか、今年5月15日の朝日新聞(朝刊)は「返済不要の奨学金検討」という見出しの記事を載せている。「親の所得格差が子どもの教育格差につながっている現状を踏まえ、文部科学省は、返済義務がない奨学金や学用品費の支援制度、幼稚園、保育園の無料化などを議論することを決めた」とし、そのために「有識者による懇談会を25日に始め、7月までに提言をまとめる考えだ」というのだ。
その「有識者による懇談会」とは「教育安心社会の実現に関する懇談会〜教育費のあり方を考える〜」のことで、安西裕一郎・慶應義塾長や中村邦夫・パナソニック会長らが名を連ねている。設置にあたって塩谷立・文部科学大臣は5月19日の記者会見でこう述べた。
「本年度補正予算においても、授業料の減免や奨学金の充実など、教育費負担の支援策を盛り込んだところですが、意欲や能力のある者が安心して教育を受けられるようにするためには、これら緊急対応に加えて、さらなる政策展開を図る必要があると考えています」。
「今後政策の参考となるように、教育費の問題、とりわけ家計負担の軽減に焦点を当てて、大局的な御議論をいただくための懇談会を設置したいと考えています」。
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