(奥野 宣之)

読者の中には、ファッションや見た目を磨くことに興味がない人も多いでしょう。かくいう筆者も最近、ある女性から「昔はおしゃれだったのに、なんでそんなになったの」と聞かれて、こう答えました。「面倒だし、正直な話、着れればなんでもいいと思ってる」。本書を読んで、その時の彼女の冷たい視線を、真っ先に思い出した次第です。
「印象は3メートルと30秒」。接近した時、出会ってわずかな時間で外見から評価が決まってしまうという意味です。何気ないファッションや仕草といった「見た目」がTPOに応じたものでないと、あっという間に「できない奴」と思われてしまう。ならば、ファッションや話し方といった「見た目」に気を配らないのは損だ。これ本書のメッセージですね。
著者は経営者や政治家のファッションや振る舞い、メディア対応などをアドバイスするイメージコンサルタント。パーティーでの服装や記者会見での受け答え、アメリカ大統領選挙の候補者演説、と出てくる事例のスケールは大きいけれど、具体的な作法としては「ゆっくり大きな声で話す」「TPOに応じてネクタイの色を変える」「姿勢をよくする」などと、至極まっとうなもの。結局、本書の売りである「見た目」を通じた「自分ブランド化」とは、要は人から不快に思われないよう「常識的なルールをどんなときでも丁寧に守り通すこと」だと分かりました。この意味で、クローゼットはどう整理すべきか、どんな髪型にしたらいいか、営業ではどんな表情を作るべきか、といった悩みを抱えている新社会人にもお薦めです。
とはいうものの、個人的にはあまり「のれない本」でした。ファッションや振る舞いで好印象をつけることに成功している事例も、政治家から企業の経営者と、普通の感覚からかけ離れたハイソな世界。さらに話が「パーソナルブランド」になると、自己分析や自己PRツールの作成、DM、出版、勉強会の主催にまで話が及ぶ。良くも悪くも「横並び」であることが特徴の日本社会で、そこまで他者から評価されるため自己演出する必要性があるのか、疑問も感じます。
ところで、本書にはファッションに無関心なせいで、損をしているビジネスマンの話が何度も出てきます。またしても、自分のことを言われているような気がしたので、さっきの女性に男は職場でどんな格好をしたらいいのかを聞いてみました。すると「モッサリしているのもダメだけど、いい年してキメ過ぎもダメ。普通が一番」というややこしい答えが。結局は、他人が違和感を持たない「普通の見た目」を作ることが肝心なのでしょう。これは、著者が「装いは自分のためではなく人のためにするもの」と言うのと通じます。でもそれがまた難しいんですが。とにかく、これからはもう少しファッションに気を配ろうと思います。
1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、新聞記者・ライターとして活躍。仕事や私生活での資料やメモの整理を独自に研究した結果をまとめた『情報は1冊のノートにまとめなさい』でデビュー。同書は31万部、読書を題材にした続編の『読書は1冊のノートにまとめなさい』が14万部、累計45万部のベストセラーとなる。情報の整理と活用、アウトプット技術などをテーマに「面白くて役に立つ本」をモットーとした著作活動を続けている。(発行部数は2010年1月現在のもの)他に、『情報は「整理」しないで捨てなさい』(PHP研究所)、『だから、新書を読みなさい』(サンマーク出版)。最新刊『人生は1冊のノートにまとめなさい』(ダイヤモンド社)も好評発売中。




