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「英訳プロジェクト」リーダーに聞いた成功のツボ

キャリワカ世代に聞くビジネス

梅田望夫氏の本
「英訳プロジェクト」リーダーに聞いた成功のツボ(3/6ページ)

先進「オープンソース」的取り組みを検証する

2009.07.03

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信頼関係が生んだ短期集中作業

 次に薬師寺氏は目標期間を設定する。

 「ゴールデンウィークの間に終わらせたい」

 予算の制約も締め切りもないのに、なぜそんな無茶を言い出したのだろうか。

 「ただ時間をかけたくなかったんです。他に勉強しないといけないこともあるし、この本にばかり時間かけてらんねえって。それはぼく個人の事情ですが。『ちゃっちゃっと終わらせよう』とほかの9人に言ったら、みんな『わかった』って言ってくれたので、実際にできたんですけど。いま考えると完成したのは奇跡ですね。作業量が多くて、徹夜もしましたが、これはできないかもと心配したことはありませんでした」

 ここで話は、最初のクローズ化に戻る。

 「今回は『Googleグループ』(*1)で人数限定でやったから、この期間でドラフトが完成したと思うんです。メンバー間の信頼関係というか、作業以外の会話がすごくあったからこその短期間ですね」

 集まったメンバーは、日本在住7人、英国在住2人、アメリカ在住1人だ。最年長者は40歳代。ITに詳しい人もいれば、翻訳に強い人もいれば、将棋に強い人もいる。多様な価値観を持つ人が『シリコンバレーから将棋を観る』を翻訳するという一つの目的で集まった。

 「一番最初は章担当をやりたい人の挙手制でざっと割り振ってスタートしたわけですが、やっているうちにどんどん変わっていくんです。『ちょっと間に合いそうにないや』っていう人があらわれたら、『じゃあオレがやっておくよ』と。『終わりそうにない』とちゃんと書いてくれるから、うまく進んだというか」

 これが完全オープンな場所なら、「ちょっと間に合いそうにないや」とはなかなか言い出せないだろう。物理的に無理となれば、リーダーにだけメールで知らせて、調整してもらうことになるかもしれない。その分、グループ内の透明性が薄れ、リーダーは調整作業に時間を取られる。オープンな発言は、クローズドな空間でメンバーを絞り込んだことによる効用である。

 「役割分担も頼んだわけでもないのに、『ここの翻訳はぼくがやるより君がやったほうが速いから、ぼくは他のことで貢献するから』って言い出す人が現れた」

 結局、終わってみれば、英訳の得意な人は一人で100ページも訳しているし、将棋が強い人は、専門的な部分のチェックを行っていた。集まったメンバーが、それぞれ自分にふさわしい場所で力を尽くしていたのである。

*1:「Googleグループ」はグーグル社が提供するネット上のサービス。Webに設けられた共通のページ上で、複数のユーザーがディスカッションしたり、ファイルをアップロードして他ユーザーと共同作業したりできるのが特徴。

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