こうして逆境を越えた

エロ本のカット描きから始まった仕事。プライド捨てて「売り込みしかない」

漫画家・西原理恵子さんインタビュー(前編)

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(聞き手=波多野 絵理、写真=加藤 康)

 マンガ界において、西原理恵子ほど人生の上り下りが激しい人は、そういない。
 ブッ飛んだ体験を自身の目線で描く“無頼派”と呼ばれ、ギャグスタイルでホンネをツッコミまくる手法の草分け的存在だが、淡い風景の原体験を叙情的に描いて泣かせる名手でもある。『まあじゃんほうろうき』や『どばくちさいゆうき』では、稼いだ金をマージャンやバカラなどのギャンブルに突っ込み、スッカラカンになったことも多々。最近も、このご時世に自腹のFX投資マンガ『西原理恵子の太腕繁盛記FX』で、どんどんヤバいことになっているご様子。『鳥頭紀行』で世界を一緒に飲み歩いたフォトジャーナリストの元夫・鴨志田穣氏は、アルコール依存症から生還したが2007年にガンで亡くなっている。一方、マンガ家生活25周年の今年は、子育ての中から生まれた『毎日かあさん』がアニメ化され、泣ける絵本『いけちゃんとぼく』の映画が公開される。
 この彼女のエネルギーはどこにあるのか。数々の逆境をどう乗り越え、成功に結びつけてきたか……。西原さん、教えてください!

上京して、一人で生きていくという決意

 西原さんの近著『この世でいちばん大事な「カネ」の話』には、前半、その生い立ちが記されている。大学受験の日に父親が自殺した。母親はかき集めたなけなしの140万の中から100万円を持たせ、東京に送り出してくれた。たった一人で上京した西原さんは、1日1個のノリ弁を食べながら、美大専門の予備校に通い、武蔵野美術大学に合格。エロ本のカット描きをしながら絵の仕事を始める。

上京して、いちばんに感じたことは?

漫画家 西原 理恵子さん

西原 東京というものの“すごさ”ですよね。若い子はみんな、信じられないほどキレイでカッコ良い。自分の生活費は8万円ぐらいなのに、同い年ぐらいの女の子が「たぶんそれ、4万円ぐらいするよね」って靴を履いてる。上のドレスなんて、もっときっと、お高いわけでしょ。

 信じられなかったですよ。垢抜けてる女の子が多すぎて。お金持ちって上には上がいるんだ……って。自分がすごくみすぼらしかった気がしたのを覚えてますね。

 美大の門を開いたら、自分が最下位。この世界で勝負するのは無理だっていう、そのくらいの客観性は持ってましたね。 音楽とか芸術には、神の領域、絶対領域みたいなのがあるじゃないですか。私が4年かけても、その領域に行くのはたぶん無理だと思いました。ところが、同級生の中にはそのレベルがいる。卒業したら彼らはもっと上手くなるわけだし、その上には東京芸大組もいますからね。この人たちと勝負してもムダだな、と。大学の門を開けた途端にそこまでシミュレーションできました。

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