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松浦晋也の「宇宙開発を読む」テクノロジー

公表された宇宙基本計画案(7)(1/5ページ)

政治の責任で5年ではなく、2年後に再度の見直しを

2009.05.18

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 今回の宇宙基本計画(案)[pdfファイル]策定にあたっては、シーズ先行の技術開発からニーズ先行の宇宙利用へという路線が打ち出された。これは、宇宙基本法作成の段階から、政治サイドから強い要求として出てきたものだった。

 その根底には「日本の宇宙開発は色々やっているが、ちっとも成果が出ないではないか」という政治の認識と苛立ちがあった。だが、日本の宇宙開発が技術開発に傾斜したきっかけは、1989年の日米通商交渉「スーパー301」で、日本政府がアメリカに譲歩したためである。政治決定の結果、日本の宇宙開発はやむを得ず技術開発に特化したのだ。

 政治の側としては、「ちっとも成果が出ない」と宇宙開発の側を責められたものではない。日本の宇宙開発が駄目になる決定を1989年に下したにもかかわらず、1990年代を通じて宇宙開発に対して効果的な施策をしてこなかった日本の政治にこそ、日本宇宙開発の停滞の責任がある。

 政治の側の「シーズ先行からニーズ先行へ」という方針の結果、宇宙開発戦略本部の事務局運営は、宇宙関係を長年仕切ってきた文部科学省から、経済産業省を中心とした官僚が行うことになった。官僚は「既存宇宙関係組織を排除する」と翻訳した。宇宙基本計画の審議を行った宇宙開発戦略専門調査会の委員(名簿:pdfファイル)から、既存組織の関係者はぎりぎりまで排除された。

 排除された宇宙開発関係者は、色々な手段を使って政治家へ働きかけ、自分の関係するセクションや計画の生き残りを図った。政治家はいそがしい職業だ。そして短時間で行わる面会では、計画の重要度ではなく、政治家の耳にとって快いかどうかが、意見の通りやすさを決める。

 つまり、今回の宇宙基本計画は、政治の「シーズ先行からニーズ先行へ」というかけ声の下、(1)宇宙関係に関する深い理解に至っていない政治家の指示で、(2)宇宙関係を仕切るのは初めての官僚が、(3)宇宙を専門としてこなかった有識者を委員に集めて――作り上げたものである。そして制定の過程には、既存宇宙関係者から政治の側へと行われたプレゼンの中で、「政治家の耳に快く響いたもの」も入り込んだ。

 これまでの6回で指摘してきたように、宇宙基本計画(案)には様々な問題点が入り込んでしまっている。過去のしがらみを断ち切ってまったく新しい方向に踏み出そうという意志は評価に値する。しかし「事実を知らず、過去に無知なまま意志決定をしてよい」ということではない。

 宇宙基本計画は、今後10年を見通して5年間に実施することを決めるものだ。だが、今回ばかりはこの原則を捨てて2年で一度見直しをすべきではないだろうか。現状の計画で2年も進めば、様々な矛盾点が噴出するはずである。

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