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松浦晋也の「宇宙開発を読む」テクノロジー

公表された宇宙基本計画案(6)(1/8ページ)

国に仇なす無定見・無制限な機密指定

2009.05.15

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 今回の宇宙基本計画(案)[pdfファイル]では、安全保障分野での宇宙利用が、かなり強く言及されている。

 安全保障の重視は、宇宙基本法の法案作成時からの大きな流れだった。政治の側は、安全保障分野の宇宙利用を解禁とすることで、「日本を普通の国にする」ことを望んでいたし、宇宙産業の規模縮小で苦しんでいた産業界は、防衛需要によって仕事が増えることを切望していた。

 技術的な状況も、この動きを後押ししていた。民間通信衛星が当たり前に利用され、携帯電話にまで米国防総省の衛星からの電波を利用するナビゲーションシステムが入っている現在、日本だけが安全保障分野での宇宙利用ができないというのは不自然である。

 しかし、宇宙基本計画(案)を読んでいくと、政界も官界も、そしておそらくは計画の審議を行った有識者委員も、等しく大きな考え違いをしているらしいことが見えてくる。

 「安全保障分野は、通常の宇宙開発や宇宙利用とは異なる特別なものである」という考えだ。安全保障は国の存立に関わる重要事項だ。だから民生用とは一線を画した最新技術を惜しげもなく予算を投じて開発・運用すべきだし、その技術は軍事バランス上の優位を保つために秘匿すべきである──というわけである。

 しかしこれは時代遅れの誤った考えだ。現状はむしろ「安全保障に資するものは、民生用にも便利」であり「民生用途で便利に使えるものは同時に安全保障にとっても有益」なのである。技術の急速な発達は、大規模破壊という一点を除き、民生用途と安全保障用途の垣根をどんどん低いものへとしている。そして宇宙分野はそのまっただ中にある。

 本気で安全保障分野における宇宙利用を進めるつもりならば、安全保障分野の研究開発は、防衛秘密の壁の向こう側で展開するだけではうまくいかない。様々な分野とオープンに協力していかなければ効率的な技術開発は不可能である。

 また、防衛分野から発注される官需は、見方を変えるならば日本の宇宙産業が国際競争力を付けるための強力な助成金に他ならない。効率的に日本の宇宙産業の基盤を強化するためには、安全保障分野をむやみに機密の壁で囲い込むのではなく、成果を積極的に民間移転していく態度が必要となる。

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