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松浦晋也の「宇宙開発を読む」テクノロジー

公表された宇宙基本計画案(5)(5/7ページ)

なにひとつ示されなかった独自有人宇宙活動の方針

2009.05.14

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 (a)は、「ISS運用で、日本は主体性は発揮できないから、計画参加各国の様子を見て日和見します」ということだ。

 これはもう仕方がないことだ。日本は人員の輸送、軌道上の生命維持・電力発生、軌道高度の維持、ステーション建設に必須のロボットアームといった、ISSの建設と維持に必要不可欠な要素を提供せず、実験設備のみの開発で参加してしまった。日本は、ISSで日和見の立場を甘受するしかない状況なのだ。

 つまり、(a)では、ISS計画に対して「今後も現状を維持します」ということを言っているわけである。

 (b)で、やっと将来どうするかという計画がでてくるが、そもそもここに記述されているのは「有人宇宙活動」ですらない。「有人宇宙活動をにらんだヒト型ロボットによる月探査」である。「有人宇宙活動」は「視野に入れている」だけ。つまり「見る」だけであり、具体的に手を動かして基礎技術を研究開発するとは一言も書いていない。

 具体的な行動計画は、「我が国の得意とするロボット技術をいかして、二足歩行ロボット等による高度な無人探査の実現を目指す」という一点だけなのだ。

 次の段階は、「有人対応の科学探査拠点を活用し、人とロボットの連携による本格的な探査への発展を目指す。」というものである。「有人対応の科学探査拠点を開発」ではなく「有人対応の科学探査拠点を活用」であることに注意が必要だ。新たに自分の意志で開発するのではまく、既存の有人拠点を「活用」すると書いているのである。

 これはアメリカが実施するとしている有人月探査を意味する。つまり今回の宇宙基本計画(案)が、唯一新たな計画として打ち出した有人宇宙活動とは「ヒト型ロボットの技術を提供することで、アメリカの有人月計画に乗っかる」ことなのである。

 しかし、ヒト型ロボットが象徴以上の意味を持たないことは、この記事で説明した通りだ。そんなものをアメリカが、有人月探査計画に有益なものとして評価するはずもない。

 今回の宇宙基本計画(案)における有人宇宙活動の方針を、私は(少々下品ではあるが)「スマタ有人宇宙活動」と命名したい。宇宙開発戦略本部は本番なしで「有人活動への地歩を構築」しうると考えているのだ。

 ヒト型ロボットはいかにヒトに似せていようが、ロボットに過ぎない。ヒトの似姿であってもヒトではない。いくらヒトに似たロボットが月に行ったとしても、それは有人宇宙活動ではない。

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