前回説明したH-Xの開発は、開発現場の技量維持と三菱重工による打ち上げビジネスの海外進出に役立つだろう。しかし、国が投資する技術開発としては、それだけでは足りない。なによりも国の政策として、せっかくLE-7/7Aで大変な苦労をして実用化した2段燃焼サイクルを捨てるというのは、あまりにもったいない。
国が行う技術開発ならば、1/2程度の低コスト化では足りない。民間では行えない、長期スパンをにらんだものでなくてはならない。すなわち国の目標となりうるのは、打ち上げコスト1/10以下を目指す、再利用宇宙輸送システムを意識した、基礎的かつ着実な研究開発である。かつてのように再利用型宇宙輸送システムを夢見るのではない。必要な要素技術をひとつひとつ基礎的な試験を積みかさねて再利用に向けた技術的基盤を作り上げていく、継続的な努力が必要なのだ。
高圧燃焼エンジンは再利用をめざしたものだった
宇宙基本計画案(2)の回に掲載した表に戻って、アメリカと旧ソ連のエンジンを見てもらいたい。
アメリカのSSMEは、スペースシャトルのために再利用を前提に開発されたエンジンである。
RD-0120は、エネルギヤのコアステージに使用された液体酸素・液体水素エンジンだ。RD-170はブースターに使用する液体酸素・ケロシンエンジンであり、その後ウクライナの「ゼニット」ロケットの第1段エンジン「RD-171」、アメリカの「アトラス5」第1段エンジン「RD-180」、ロシアの次世代ロケット「アンガラ」の第1段エンジン「RD-191」などの多数の派生型を生んだ傑作エンジンである。
そしてRD-701は、ソ連末期に未完成に終わった空中発射型スペースプレーン「MAKS」のために開発されたエンジンだ。酸化剤は液体酸素で、燃料を打ち上げの途中でケロシンと液体水素で切り替える、3元推進剤という世界初の技術に挑戦したエンジンでもある。
これらのエンジンが、200〜300気圧もの高圧燃焼を行っているのには理由がある。これらはすべて、低コスト化を目指す再利用打ち上げシステムのために開発されたのだ。
バックナンバー
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