時代を読む新語辞典

「水メジャー」〜世界上下水道市場から取り残される日本 (2/3ページ目)

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 このような垂直統合的な事業に強いのは欧州系の企業だ。世界市場における給水人口ベースのシェアは、1位のSuez、2位のVeolia(ともにフランス)、3位のThames Water(英国)の3社で約80%を独占する。これらが水メジャーと呼ばれる存在だ。また最近ではM&A(企業の合併・買収)の手法で参入するGE(アメリカ)などの企業や、国家的に事業参入を狙うシンガポールなど、市場のプレーヤーも増えつつある(参考:産業競争力懇談会「水処理と水資源の有効活用技術」など。社名は資料発表当時)。

 水メジャーの事業規模は大きい。例えばVeoliaの場合、給水人口が約1億3100万人。サービスの提供範囲もドイツや米国などの欧米圏に留まらず、イスラエルやモロッコなどの中東・北アフリカ圏、中国や韓国などのアジア圏にも及ぶ。2007年の総売上高は109億ユーロだった(参考:同社ウェブサイトなど)。

 ではなぜ、水メジャーの主役は欧州企業なのだろうか? それは欧州で早くから上下水道の民営化が行われたためだ。例えばフランスの上下水道では、約150年にわたり公設民営方式が主流だった。また英国はサッチャー政権下の1989年に、イングランドとウェールズにおける上下水道の完全民営化も実施している。このような環境でノウハウを蓄えた企業が、国際市場でも強い競争力を発揮している。

 そして世界における同事業の市場規模は拡大が予測されている。産業競争力懇談会の推計では、2005年に約60兆円だった市場規模が、2025年には約100兆円に拡大する見込みだ。このうち素材供給にかかわる市場規模は約1兆円、プラント建設まで含めた市場規模は約10兆円、運営や管理まで含めた市場規模が100兆円となっている。運営や管理にかかわる市場が如何に大きいかが分かる。

 市場拡大の背景には新興国の経済発展がある。経済発展に伴い水不足が深刻化しているのだ。水不足は経済発展や安全保証の阻害原因になり得る。このため新興国では上下水道の整備が急務となる。しかしこれらの国では上下水道の運営ノウハウが蓄積されていないので、民間企業に発注をかけることになる。いっぽう進出側の企業や国にとっては、水資源の間接的確保が国家戦略上の意味も持つため、両者の利害が一致する。

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