「自動車を見れば、その国の技術力や経済状況がわかる」という言葉がある。いささか大げさな言い方のような気がしなくもないが、自動車産業は先進国においてはその国を代表する産業であり、一国の経済を牽引する役割を担っていることは確かだ。今回は、日米独の自動車産業に関するニュースをもとに述べてみたい。
米国政府の取り得る選択肢にはGMの「倒産」もある
米国オバマ大統領は、3月29日放映の米CBSテレビのインタビュー番組で、米国自動車大手GMとクライスラーの救済問題をめぐり、「両社が追加支援を得るにはさらなる自主努力が必要である」との認識を示した。追加支援の条件となる大幅なリストラが実現したかどうかに関しては、「その段階まで達していない」と語った。
要するにオバマ大統領は両社の再建計画を「不十分である」と拒み、見直しを要求したわけである。果たして翌30日、彼はGMおよびクライスラーへの追加支援に関する最終判断を1〜2カ月先送りすることを明らかにした。ただし、GMにはつなぎ資金として60日分の運転資金を提供し、クライスラーには30日以内に伊フィアットとの提携合意を求めることを発表した。
この問題をめぐっては米国メディアが様々な報道をしている。中でも興味深いのは3月29日(つまり、先のインタビュー番組の放送日)、GMのCEO(最高経営責任者)であるリチャード・ワゴナー氏が引責辞任した、というものだ。順当に考えれば、オバマ大統領がワゴナー氏の「首を取った」と解釈できよう。見方を変えれば、GMの去就について米国政府は直接責任を負う、との表明ともとれる。ワゴナー氏に引責辞任させ、その代わりにGMを救済してやるという格好になるわけだ。
ただし、米国政府が取り得る選択肢には「救済」だけでなく「倒産」もある。実際、オバマ大統領は「選択肢の一つとしては"bankruptcy(倒産)"がある」と述べているのだ。救済するよりも、つぶしてしまったほうがその後の処理もしやすいということだろう。また、オバマ氏がそこまで腹をくくっているのなら、高い賃金などを要求するGMの労働組合との交渉において妥協もできるはずだ。現状では、米国政府がGMを倒産させる可能性は低いと見られるが、労働組合との交渉がまとまらない場合、オバマ大統領はGMに対してチャプター11(米連邦倒産法第11章)か、もっときつい法の適用を迫ることになる。労働組合を支持基盤とする民主党のオバマ氏にとっては、これはできれば避けたい選択肢であることは間違いない。
米国の自動車産業をめぐる報道で、もう一つ、わたしの興味を引いたのは「クライスラーの株式すべてを親会社のサーベラス(投資会社)が手放すことで米国政府と合意した」というものだ(ニューヨークタイムズ、4月1日)。
サーベラスもファンドのくせに何をやっているのだろうか。ダイムラー・クライスラーがクライスラー部門を切り離し、その株式の80.1%を55億ユーロ(約9000億円)でサーベラスへ売却することで基本合意に達したと発表したのが2007年5月14日のことである。それから2年弱、クライスラーはサーベラスの下で「クライスラー・LLC」として事業再建を図ってきた。その結果がこうだ。サーベラスも高い買い物をしたな、みっともない判断をしたな、と感じる。
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