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技能の伝承を絶やしては会社の将来はない
現場のボトムアップで品質と売り上げが向上(6/6ページ)

2009.04.16

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技能を伝承していかなければ将来はない

 汎用工作機械を使える熟練技能者がどんどん高齢化しているなか、技能の伝承は引き続き大きな課題である。三益工業は、東京都大田区の本社工場と栃木県那須塩原市の那須工場を合わせて35人の技能者が現場で働いている。その年齢構成を見ると、技能伝承問題が浮き彫りになる。

 本社工場には熟練技能者が多く、汎用工作機械で作業をしている。熟練技能者の平均年齢は約63歳で、最高齢は72歳になる。基本的に60歳定年だが、優秀な熟練技能者は再雇用している。

 これに対して、那須工場は若手・中堅が多く、コンピューター制御の工作機械を用いている。平均年齢は約39歳と若い。

 若手に技能を伝承していくために、世界経済が急速に悪化する直前までは、三益工業でも人材採用を積極的に行ってきた。08年秋には、自動車工場で働いていた35歳の元派遣技能者を中途採用している。この春には、18歳を含む2名の新入社員が入ってきた。

 「若手技能者にいろいろ教えたからといって、われわれが思い描いているような存在になるかどうかは不確かです。不確かだからこそ、多くの企業が技能伝承を絶やしてしまったのでしょう。実際、日本経済の長期低迷や、大手得意先の生産拠点の海外シフトにより、大田区の中小企業の多くが人員を抑制してきました。技能の伝承、人材育成が地域ぐるみで滞ってしまったんですね。その結果、現在では、中小工場が集中する大田区ですら、労働市場で経験者を見つけることが難しくなっています。しかし、それでも技能伝承をやっていかなければ、将来ダメになってしまうのは明らかです」と中西社長は警告する。

 現在の不況下では、三益工業の業績も厳しくなってきている。なかでも、新しい中型旅客機ボーイング787関連の発注延期が響いた。07年第3四半期に初飛行の予定だった同機は開発が遅れに遅れていたが、不況で初飛行がさらに2009年第2四半期にずれ込んでいる。

 受注が減っているため、「教えるネタとなる仕事そのものがない」(中西社長)のが悩みだが、それでも、回復期にそなえて、技能の伝承と人材育成の取り組みは続く。

宮島 理 (みやじま・ただし)
1975年生まれ。山形出身の大阪育ち。現在は関東在住。東京理科大学理学部物理学科中退後、IT系企業設立を経て1996年、フリーライターに。著書に『就職氷河期世代が辛酸をなめ続ける』(洋泉社)、『格差社会』(九天社)、『2007年問題のすべてがわかる』(技術評論社)、『経済大論戦』(朝日新聞社、共著)、『素顔の科学誌』(東京書籍、共著)など。ホームページはhttp://miyajima.ne.jp/
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