トップ > がんばれ ニッポンの製造業 今こそ成長への布石を打て > 技能の伝承を絶やしては会社の将来はない
現場のボトムアップで品質と売り上げが向上

がんばれ ニッポンの製造業 今こそ成長への布石を打てビジネス

技能の伝承を絶やしては会社の将来はない
現場のボトムアップで品質と売り上げが向上(1/6ページ)

2009.04.16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

宮島 理 (みやじま・ただし)

 日本のものづくりを支える町工場が5000ほど集まる東京都大田区。その一角に、精密機械加工や真空熱処理を得意とする、従業員50人ほどの中小企業がある。1966年の創業で、航空・宇宙機器部品や原子力燃料体部品などを製造する三益工業だ。

 6年前に三益工業は外部環境の変化で既存受注の多くを失いながらも、人材育成に力を入れることで危機を脱した経験を持つ。その一連の取り組みが評価され、2008年度の「東京都中小企業ものづくり人材育成大賞知事賞」の大賞を受賞した。

自社の技能が非常に脆いものだということを痛感
三益工業の中西忠輔社長。「わが社には技能があると信じていたのに、それが非常に脆いものだということを痛感した」のがきっかけとなり、技能の伝承と人材育成に力を入れ始めたという

 中西忠輔社長は、先代が63歳で急死後、跡を継いで2001年に就任した2代目。社長業に慣れる間もなく、2002~03年頃から外部環境の激変に巻き込まれた。

 「それまでは、主に航空機部品メーカー1社と原子力発電メーカー1社から仕事を請けていたのですが、その得意先2社からほぼ同時期に外注費のカットを宣告されてしまったんです。どちらか1社だけなら何とかなったのですが、たまたま2社同時に受注が減ることになったので、相当厳しい状況に立たされました」

 特に航空機産業では、03年度から防衛予算のカットが進んだことも痛かった。日本の航空機産業は、長年、防衛需要に依存してきた。防衛予算の削減で需要が縮小した以上、その影響はどうしても下請けメーカーに及ぶ。

 既存受注の多くを失った三益工業では、それまであまり力を入れてこなかった新規開拓を行い、民間航空機の部品を中心に新たな顧客を獲得していった。新規受注に効率良く対応するため、それまで現場を兼任していたベテランを現場から退かせ、生産技術の管理職に専念させる体制を築いた。

 しかし、ここで大きな問題が発生する。新規受注品の加工に現場が対応できなくなってしまったのだ。

 「現場が1人のベテランに依存していたことが明らかになったんです。それまでは、それぞれの技能者が自立して作業をしていると思っていました。しかし実際には、要所要所でわからないことをベテランに聞いたり、頼ったりしていたんですね。わが社には技能があると信じていたのに、それが非常に脆いものだということを痛感しました。迂遠なようですが、ベテラン頼みの現場を改善して、全体をボトムアップしなければ、たとえ受注が増えたとしても将来はない。そう考えて、人材育成に力を入れることにしたんです」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ログイン
  • マイフォローとは?
nikkei BPnet 会員サービス
トピックを選ぶ!フォローする 自分のメディアを組み立てる! マイフォロー

ランキング一覧を見る

おすすめ情報【PR】

締切間近のセミナー