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茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

創造性と公共性を両立させる

建築家・伊東豊雄

 1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。
 今回は独創的な建築で世界的な評価を得ている建築家・伊東豊雄氏との対話から、創造性と公共性の両立について茂木氏が語る。
 (本コラムのバックナンバーは茂木健一郎の「超一流の仕事脳」をご覧ください)

 今回、建築家の伊東豊雄さんの話を伺って、創造性と公共性の関係についてロジカルで明晰な構図が描けたように思う。

 アインシュタインも言っているように、創造の最初の「シーズ」は個人から出るしかありえない。そういう意味で言うと、伊東豊雄建築設計事務所から出る建築の最初の出発点のすべては伊東さんのコンセプトのスケッチにある。

 それがいろんな人の意見を聞いて、凹型人間として吸収するという手法をとることによって、最初のシーズがだんだん変化していくのだが、その結果、伊東豊雄も想像していなかったところへと姿を変えていく。それこそが創造性であって、また公共性を帯びることでもある。公共性を帯びるプロセスと、創造性を帯びるプロセスにおいてまったく同じところを足がかりとして成長していくというところが面白い。

 私も常に言っていることだが、「創造することは、自分の過去の記憶の組み合わせ」にすぎない。過去の経験の組み合わせから新しいものが生み出されるのだが、その次に伊東さんがおっしゃったのは「だから、自分の脳だけだと限界がある」。ということだ。ほかの人の脳は別の経験のセットののようなもので、それらを組み合わせることで、自分が創造もしなかったものが生み出される。

 これは非常にロジカルなことだ。大切なのは、自分の脳が生み出すシーズ、他の人の脳をを取り込んでいく姿勢、この両者のバランスである。

 最初のシーズを生み出す伊東さんのこだわりは、鉛筆、紙、原稿用紙のどれを選ぶかといったきわめて繊細な感覚に支えられた、とてつもない感性の作りこみから生まれている。そうした部分と、さまざまな人の意見を聞いたりすることの両方が同時に起こることで、伊東さんの大きな仕事が生まれているのだと実感した。

 発想の元となる「シーズ」がなくて、人の話ばかり聞いている人はダメ。一方でシーズは持っていても、ほかの人の話を聞かない人もいる。日本のクリエーターは独りよがりな人が多い。

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