ソフトウエアをネットワークを通じてサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)事業への参入企業が相次いでいる。SaaSが普及すれば、情報システムのビジネス・モデルは大きく変わるため、ベンダー各社はサービスの品揃えや販売体制作りに躍起になっている。日経マーケット・アクセスの予測では、国内のSaaS市場は2010年から本格的に立ち上がり、2011〜12年に大きく成長する。
情報システムの変革期、SaaSへの流れは不可避
「SaaSが普及したら、自分たちのビジネスは縮小するかもしれない──」。このような懸念を抱くシステム・インテグレーターもいるが、SaaSへの流れはもはや止められそうにない。ユーザーがSaaS利用に意欲的になっていることが大きい。これまでサーバーやクライアントを大量に導入してきたユーザーはソフトウエアのバージョンアップや運用管理にうんざりしており、SaaS導入による負荷軽減に大いに期待を寄せる。
また、中小企業のように情報システムに人手が割けない場合には、SaaSを利用するのも情報化の一つの手段である。自治体などでは、同じようなシステムを複数の自治体が構築することがあるが、SaaSを利用してアプリケーションを共有すれば非効率さを改善できる。このようなSaaSのメリットを、仮想化やクラウド・コンピューティングといった新しい技術が後押ししているのが現在の状況だ。
日経マーケット・アクセスが実施した調査(*1)では、2008年8月時点でSaaSを利用していると回答した人が17.8%だった。また、SaaS利用者が使用しているアプリケーション分野を尋ねたところ、「電子メール、SNS、コンテンツ管理、文書管理、内部統制」が31.5%と最も多く、次いで「会計、人事・給与、経営戦略・意思決定支援系」の15.2%だった(図)。このほかに業務系では「salesforce」に代表されるCRM(顧客管理)のほか、SFA(営業支援システム)などのアプリケーションが挙がった。

マイクロソフト、日本IBMも参入
国内のSaaS市場で先行する代表的なベンダーとしてはセールスフォース・ドットコムの認知度が高いが、2008年には富士通、NECもSaaSビジネスに参入した。2009年からはマイクロソフトと日本IBMが加わる。マイクロソフトは2009年4月に、ビジネス向けのサービス「Exchange Online」と「SharePoint Online」、コンシューマー/SOHO向けのサービス「Office Communication Online」などを開始する。日本IBMは今年後半以降、中堅・中小企業向けのSaaSアプリケーションとしてグループウエア「Lotus Live」を提供する予定だ。
政府の取り組みもSaaS市場の拡大を促進すると見られる。2009年3月末には、経済産業省が中堅・中小企業の情報化促進と業務効率向上を目指して構築したSaaSインフラ「J-SaaS」が始動。50万社がアクセスできるようにすることを目標にしている。将来は電子申請にもつなげるという。
一方、総務省は2009年3月、ICT産業の拡大を目指す「デジタル日本創生プロジェクト(ICT鳩山プラン)」を発表した。現在100兆円弱のICT関連市場で今後3年間に数兆円規模の市場を創出し、2015年〜2020年にはICT市場規模の倍増を目指す。また同プランには、各省府のデータセンターを一元化する「霞が関クラウド(仮称)」を2015年までに段階的に整備することも盛り込んだ。動き出せば、データセンターの有効的な活用例になると同時にSaaS市場の拡大にも寄与すると考えられる。
市場の本格的な立ち上がり2010年から
このようにSaaS市場は後押しする材料に事欠かない。2009年は経済状況の悪化からIT投資抑制の傾向が強くITシステム導入の動きが鈍ると予想しているが、今後5年間のうちにSaaS市場は大きく展開するだろう。2010年ころになると市場が伸び始める見込みだ。さらに2011年〜2012年には成長率が約20%増と伸び、市場拡大の勢いが強まると予測している。
*1 調査報告書「SaaS/ASP利用実態調査2008」を2008年9月に発行。