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松浦晋也の「宇宙開発を読む」テクノロジー

浮上した日本の有人月探査計画(2)(1/5ページ)

過去の経緯と矛盾する内容、浮かび上がる権限を巡る綱引き

2009.03.16

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 宇宙開発戦略本部事務局が、3月6日の宇宙開発戦略専門調査会・第5回会合に提出した「先端的な宇宙開発利用の推進について(宇宙科学、有人宇宙活動、宇宙太陽光発電等)」という文書を読んでいくと、内容がこれまで文部科学省・宇宙開発委員会で審議されたり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提案してきた長期ビジョンなどと矛盾する点が多いことに気が付く。

 一般に官僚は、文書間の矛盾には敏感であり、可能な限り避けるものだ。それが過去の文書との矛盾を放置したかのような文書を出すというのは、この文書が内容を十分練り上げる時間的余裕なしに作成され、会合に出てきたことを示している。実際、各方面に聞いてみると、今回の有人構想は、2009年に入ってから急に動き出したものだという。同文書提出前後にJAXA内では上層部から現場に「現在保有する有人技術の種はどれか」という問い合わせが回ったそうだ。

 現在宇宙開発戦略本部では、宇宙開発そのものを文科省から内閣府に移管するという話が出ており、文科省が激しく抵抗している。今回の文書の内容と、周辺の状況を考え合わせてみるに、宇宙分野を内閣府に持って行かれそうになっている文科省が、宇宙開発を内閣府に持って行かれることに対する牽制と「今、カードを切らずしてどうする」という意識とが組み合わさって有人月計画を出してきたという推測は、十分な整合性があるように思える。

 有人月探査の実施は、実施するにせよしないにせよ、議論にあたっては、十分な事前の技術的検討と、科学的価値の見積もり、国際状況の中で日本が置かれた現状の正確な把握が必要となる。今回の文書は、それらなしに、政と官の間の葛藤の中で、拙速に提案されたものである可能性が高い。

 とするならば、今回の文書は、真に日本の未来を考えてのものではないことになる。

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