(桐原 涼=経営評論家)
100円パソコン登場
消費者心理の悪化が続き、消費退潮の動きが加速化している。これに伴い、縮小するパイの奪い合いも激しくなっている。消費者の節約志向を受け、家電や衣料品などの値下がりも急だ。1990年代の「価格破壊」の時代には、“1円ケータイ”が話題になったが、最近はついに“100円パソコン”が登場した。ノートパソコンの価格が急速に値下がりしており、家電量販店やネット販売サイトの最廉価品は100円や500円といった衝撃的な価格となっている。
もちろん、100円パソコンには“カラクリ”がある。このような激安価格にはイー・モバイル(データ通信)の加入要件が付いており、イー・モバイルの販売促進費が値引き原資になっているのだ。とはいえ、いままでは20万程度の値付けが普通だったノートパソコンが、タダ同然でたたき売られる現実は衝撃的である。
付加価値の“崩壊”
パソコンは今までも値下がりを続けていたが、15〜20万円という標準価格帯が切り下がることはなかった。同一商品の価格が値下がりしても、後継のハイスペック商品との世代交代により、最新商品の実売価格は一定に保たれていた。つまり日本のパソコンメーカーは、継続的に付加価値を高めることにより、製品の価格水準を維持してきたのである。
ところが2008年の秋以降、情勢が一変した。パソコンメーカーは相変わらず、20万円前後の高付加価値モデルを市場に投入しているものの、消費者の反応は良くない。その一方、海外でブームになっていた低価格パソコン(5万円パソコン)が、日本市場にも波及してきた。そして市場競争の更なる激化とともに、「5万円パソコン」から「3万円パソコン」へ、そして「100円パソコン」へとエスカレートしてきたのである。
今われわれが目にしているのは、日本の消費財企業が脈々と築いてきた「付加価値」が、もろくも崩れ落ちていく姿である。
当然5万円以下のパソコンと15万円以上のパソコンでは、スペックの差はある。しかしネットとメールくらいしか使わないライトユーザーにとって、5万円パソコンでは困るかと言われれば、決してそんなことはない。それでも今までの日本の消費者は、高付加価値製品を選好してきた。日本の消費者には「ブランド崇拝」や「高機能好き」の傾向があり、そんなときの消費者の声は、「せっかく買うなら良いものを買いたい」だった。
ところが昨年の秋以降、消費者の態度は急速に変わった。その態度は「少しでも安く買いたい」「安ければ買うが、高いものは買わない」であり、高付加価値品をリスペクトする姿勢は著しく弱まった。
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