内閣官房・宇宙開発戦略本部は2008年12月2日に第2回会合を開催し、「宇宙基本計画の基本的な方向性について」を了承した。これは、今年8月に施行した宇宙基本法にある、日本の宇宙開発の方針を具体的に示した宇宙基本計画の策定にみうけた方向性を示す文書である。同文書は以下の5つの方針を打ち出した。
「宇宙を活用した安全保障の強化」
「宇宙外交の推進」
「21世紀の戦略産業の育成」
「人類の夢・次世代への投資」
ところが今になって、政治、官界、産業界、科学のコミュニティ等々から一様に、「誰か、統一的かつ実効的なヴィジョンを書ける人材はいないのか」という奇妙なつぶやきが漏れだしている。
その原因は、宇宙基本法が政治主導の宇宙開発を目指しているところにある。政治主導である以上、政治家は宇宙開発について主体的な判断を下せるだけの知識と見識を持っていなければならない。しかし現在のところ、政治家は宇宙開発に関する知識を吸収している途上であり、主体的な判断を下せる状態ではない。勢い、政治家としては「良い計画を持ってきたら、喜んでプッシュするから持ってきてくれ」と言う態度となる。
一方これまで、様々な権益の主張をうまく調停して日本の宇宙開発の方針をとりまとめてきた官僚も、政治主導を明記した宇宙基本法が存在するために、従来と同じボトムアップ型の意志集約で、宇宙基本計画を作成することができないでいる。
12月2日に打ち出された5つの方針はよく見れば、かなりの部分に既存の関連勢力からの要求が総花的に入り込んできている。その意味では、これまでの官僚主導の宇宙開発体制で作られてきた文書との大きな違いはない。おそらくはこれ以外にやりようがなかったのである。
既得権益を持つ組織は現在、一斉に宇宙開発戦略本部、さらには政治家に働きかけており、宇宙開発戦略本部周辺からは「これでは過去の壺の中の争いと変わらない」という嘆きも聞こえてきている。「壺の中の争い」とは、年間2000億円に満たない予算の中で、様々な既得権益がより大きなパイを確保しようとして争っている様を皮肉ったものだ。
その結果が「誰か、統一的かつ実効的なヴィジョンを書ける人材がいないのか」という声となって現れている。
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