吉原欽一
社団法人アジアフォーラム・ジャパン専務理事
11月7日、バラク・オバマ米次期大統領は当選後初の記者会見に臨んだ。金融危機脱却や経済再建に向けて「必要なあらゆる手段を取る」と言明、さらに閣僚人事やイランの核問題などについて語る彼は、選挙戦の興奮とは異なり慎重な物言いであった。
しかし、ホワイトハウスで飼うと2人の娘に約束した犬の話になると、場は一転して笑いに包まれた。オバマは、飼い犬の条件として、娘のアレルギーを起こさないことと、引き取り手のない犬が望ましいことを挙げ、「引き取り手がない犬の多くは雑種(mutt)だ。私のように」とジョークを飛ばしたのである。
いうまでもなく、それは彼が黒人と白人の混血であることを意味している。だが、1年半にわたってオバマの選挙戦における言動を観察し、オバマという存在をアメリカという国の歴史的文脈に位置づけようと試みてきた筆者は、「雑種」という言葉に、思わず膝を打った。
オバマは、たしかに選挙戦のスローガンであった「チェンジ」という言葉に象徴される新しさを持っている。だが同時に、過去の偉大な大統領たちの存在を強く意識している。彼は勝利演説で、「国を建て直す仕事への参加をお願いしたい」と国民に呼びかけた。これは、「国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国家のために何ができるかを考えて欲しい」というジョン・F・ケネディの言葉を思い出させる。また、金融恐慌からアメリカを救うために、フランクリン・ローズヴェルトのように連邦政府の役割を強化しようとしている。
ケネディとローズヴェルトは民主党の大統領だが、オバマは、「保守のアイコン」であるロナルド・レーガンについても、その楽観主義(オプティミズム)を賞賛している。もちろん楽観主義とは、根拠なく楽観的な見通しを示すことではない。きちんと準備をしたうえで「Yes, We can(そう、われわれにはできる)」と決断し行動することだ。さらに勝利演説では、「自己への信頼と個人の自由、国家の融和という価値観をかかげた共和党の旗を初めてホワイトハウスに掲げたのは、このイリノイ州出身の人物であった」と、共和党の象徴であるエイブラハム・リンカーンに言及し、南北戦争の頃のように分裂してしまったアメリカに対して融和を呼びかけた。
このように、リンカーン、ローズヴェルト、ケネディ、レーガンといった偉大な大統領たちから、いいとこ取りをして政治家としての自分をつくりあげたオバマは、まさしく雑種――より肯定的にとらえるならば、「ハイブリッド(hybrid)」大統領なのだ。
バックナンバー
- オバマ新大統領は筋金入りの実利主義者
日米同盟や通商、小沢民主への影響を読む(2008年11月25日) - 融和をめざす「オールスター政権」
そしてヒラリーは国務長官になるのか(2008年11月21日)















