言葉が身体に影響を及ぼす
例えば、『スポーツオノマトペ』(藤野良孝著/小学館)という本がある。「オノマトペ」とはもともとフランス語で、「擬態語」「擬声語」といった意味だ。卓球の福原愛選手の「サー!」や長嶋茂雄氏の「ビューと来たらバシンと打て」に代表されるような、スポーツと言葉の深い関係を探求したユニークな一冊である。
その中に、興味深い事例が紹介されている。子どもに跳び箱を指導するとき、一連の動作を言葉で説明すれば、「助走をつけて踏切板でジャンプし、両足を広げると同時に両手をまっすぐに伸ばして跳び箱の上に突き、向こう側に着地する」ということになる。しかし、これを聞いただけで跳べる子はいない。
ところがこのとき、「サーと走ってタンと跳び、パッと手を突いてトンと着地する」と教えると、俄然跳べる子が増えてくるという。「サー・タン・パッ・トン」という軽快なリズム感からコツを掴んでいくからだ。
たしかに、私にも思い当たるフシがある。例えば体育館で小学生を指導しているとき、単に「広がって!」と声をかけるより、「パーッと広がって!」と言ったほうが反応が早い。だから「ここを回って!」ではなく「ここをグルグル回って!」、「まとまって!」ではなく「ギュッとまとまって!」と言うようにしている。こういう言葉に、子どもの身体は感応しやすいのだ。
あるいはもう一歩進んで、「ギュッと小さくなって石になろう」とか「フワフワした煙になろう」と呼びかけることもある。そうすると、子どもたちは身体の重さの感じ方が変わってくるという。伝える言葉のイメージによって、身体の状態にまで変化を及ぼすことができるわけだ。