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満月の夜には人も凶暴になる!?

2006年03月20日

 昔から西欧では、月の満ち欠けと、生死を含む生物の様々なサイクルの関係を信じる人が多い。これは、医療従事者も例外ではないようだ。



 「ルナティック(精神異常者)」という言葉が示すように、満月と精神疾患の関係が初めて指摘されたのは、ローマ時代だという。実際、在宅の精神疾患患者を対象にした研究では、統合失調症の患者には満月の時期に症状の変化が見られたことが報告されている(1)。



 てんかん発作との関係を調べた研究では、満月の夜にてんかん発作が増加することを示す結果は得られなかった。しかし、非てんかん発作は増加する傾向があった――と報告されている(2)。



 満月の夜6時から翌朝6時までの、精神疾患による救急部門の受診者数が、その他の日より多いかどうかを調べる研究を行ったのは、米Mayoクリニックだ(3)。2005年発表の論文によると、結果は、「否」だった。自傷行為としての火傷で救急部門を訪れた患者の数と月の満ち欠けの関係を調べた英国の研究も、有意な結果を得ていない(4)。



甲状腺クリニックの予約状況が満月と関係?



 精神疾患との関係の説明を試みた研究もある(5)。人工的な明かりがなかった頃には、満月の夜の明るさが睡眠不足を招いたのではないか――との推測だ。睡眠不足は一部の精神疾患を悪化させる。人類が人工的な照明、特に電灯を得て以降は、睡眠サイクルへの月の満ち欠けの影響は小さくなったのではないかと著者たちは述べている。



 それでは、動物たちには満月の影響が強く表れるだろうか。British Medical Journalに掲載された2つの論文は、相反する結果を示した。いずれも、動物に噛まれて救急部門を訪れた患者を対象とする調査だが、英国(6)では、満月の夜には患者が有意(p<0.001)に多く(噛んだ動物の94.1%は犬、3.4%が猫、0.8%が馬、0.7%がラット)、豪州(7)では、犬に限って調べたところ、満月との関係は有意ではなかった。



 狼男は満月に出現する。人も月を見て凶暴になるのか。スペインの研究者たちは、救急部門を受診する暴力の被害者の数を調べた。結果は、統計学的には有意ではないが、満月の夜には被害者が多い傾向が見られた(8)。



 満月は、人間の行動や意識を動かすだろうか。オーストリアでは、甲状腺クリニックの予約状況と月の満ち欠けの関係が調べられた。こうした研究としては初めて、有意な関係を見いだしたという(9)。



 これも行動への影響というべきだろうか。スイスの病院で行われた研究では、入院患者の転倒の頻度は、月の満ち欠け、曜日、季節などとは関係がなかったと報告されている(10)。



新月時期には急性冠疾患による入院が多いとの報告も



 満月の日に乳がんの手術をすると予後が悪いという話を信じる患者と医師がいるという。その真偽を調べたオーストリアの研究は、有意な関係を見いだせなかったが、前向きの無作為割付試験ではないので、患者の選択に役立つほどのパワーは持たないと著者たちは言う(11)。



 満月と心疾患の関係を調べた論文は複数ある。急性心筋梗塞および心停止の発生と月の満ち欠けの関係を調べた研究(12)では、有意な関係は見られず、急性冠疾患による入院の頻度と月の満ち欠けの関係を調べたインドの研究は、新月時期に入院患者が有意に多いと報告している(13)。



 救急部門での心肺蘇生実施頻度は、満月に増えるわけではないが、新月の時期には6.5%(p=0.02)少ないという米国の報告もある(14)。



 スペインでは、消化管出血による入院が、満月の時期には多くなる傾向が認められたと報告されている(15)。



 英国のNHSトラストは、口腔や顎顔面の損傷により救急部門で処置を受けた患者の数と月の満ち欠けの関係を調べた。得られた結果は、満月の時期における患者の有意な増加を示さなかった(16)。



 さて、金曜日ではないが、次の4月と5月は連続して13日が満月にあたる。どのような月夜を迎えることになるだろうか。



(大西 淳子=医学ジャーナリスト)



〔参考文献〕
(1)J Psychosoc Nurs Ment Health Serv. 2000 May;38(5):28-35.
(2)Epilepsy Behav. 2004 Aug;5(4):596-597.
(3)Psychiatr Serv. 2005 Feb;56(2):221-222.
(4)Burns. 2004 Dec;30(8):833-835.
(5)J Affect Disord. 1999 Apr;53(1):99-106.
(6)BMJ. 2000 Dec 23-30;321(7276):1559-1561.
(7)BMJ. 2000 Dec 23-30;321(7276):1561-1563.
(8)Eur J Emerg Med. 2002 Jun;9(2):127-130.
(9)Wien Klin Wochenschr. 2003 May15;115(9):298-301.
(10)BMC Nurs. 2005 Oct17;4:5.
(11)Breast Cancer Res Treat. 2001 Nov;70(2):131-135.
(12)Resuscitation. 2003 Feb;56(2):187-189.
(13)J Indian Med Assoc. 2003 Apr;101(4):227-228.
(14)Eur J Emerg Med. 2003 Sep;10(3):225-228.
(15)Int J Nurs Pract. 2004 Dec;10(6):292-296.
(16)Br J Oral Maxillofac Surg. 2003 Jun;41(3):170-172.



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