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米最大手の食肉加工業者が民主党に怒る理由

2006年2月21日

「工場見学の機会を与えてくれて感謝します。我々は見たことを話しているだけです」――。2月10日(米国時間)、ファクスで届いた日本の民主党からの回答文。そのそっけない内容に、質問状を出した米最大の食肉加工業者タイソン・フーズの民主党への不信感は一気に高まっている。


事の発端は2月2日、民主党のBSE(牛海綿状脳症)問題対策本部の米国調査団が開いた記者会見。「工場は髄液が飛び散っていた。BSEの原因物質が蓄積するとされる特定危険部位の除去が粗っぽい。高圧洗浄しているので大丈夫との説明だったが、完全には洗浄できていない印象を受けた」(山田正彦衆院議員)、「(特定危険部位である)脊髄の神経根の部位が残存しているのを確認した」(岡本充功衆院議員)。日本の米国産牛肉輸入条件である特定危険部位の除去が不十分との報告が相次いだ。


工場視察は30分


これに、視察を受け入れたタイソンが不満をあらわにする。調査団の団長である山岡賢次民主党副代表に宛てて、工場で目撃された内容とは違うとして、発言の撤回と謝罪を2月2日(米国時間)に要求した。これに対する回答が冒頭の内容だ。


では一体、民主党はどのような視察を行ったのか。国際電話でタイソンに問い合わせると、意外な事実が明らかになった。


当初、調査団は1月30日午前8時にタイソンのエンポリア工場に到着する予定だった。ところが、直前の27日、午前11時に変更してほしいと連絡が入ったという。さらに訪問当日、再度、時間が変更に。他社の工場訪問のため午後1時に到着することになった。


ここでタイソン側に問題が生じた。午前中の作業は午後2時に終了するため、工場視察に十分な時間が取れない。その結果、急いで工場を案内することを迫られた。


結局、調査団は午後1時15分に到着。約30分間、品質の格付け現場や屠蓄場を視察した。当日、タイソンは日本への輸出条件である20カ月齢以下の牛肉を別途用意して判別する体制を示そうとしていたが、調査団は「見なくていい」と対応したという。このほか、食肉加工工場や牛の係留所なども視察せずに済ませた。


その後、タイソンが40分ほど、特定危険部位の除去に関する取り組みなどを説明して質疑応答へ。


約1時間、その内容は「月齢証明ができる牛はどのぐらいいるのか」「枝肉から取り除いたタンや内臓などが、20カ月齢以下であることを確認できる仕組みはあるのか」「輸入再開で最大どのぐらいの輸出量が見込めるのか」「輸入再停止を引き起こしたアトランティック・ビール・アンド・ラムについてどう思うか」など8項目に及んだという。


「髄液が飛び散っているとか、脊髄が除去されていないなど、日本で彼らが発言した内容に関する質問は、工場でも質疑応答の席でも一切出なかった」。タイソン側はこう主張する。


そして、午後4時に調査団は帰国の途に就いた。


こうした調査団の姿勢に「小泉純一郎政権を糾弾するために、最初からアラを探しに来ただけではないか」という疑念をタイソンは抱いている。山岡副代表への抗議文に「日本国内の政争に利用されることは遺憾です」という一文を盛り込んだのはこのためだ。


米国産牛肉の輸入再開からわずか1カ月で特定危険部位が付着した牛肉が到着、すぐに輸入再停止を余儀なくされた小泉内閣。米国が輸出条件を見過ごしたミスは、日本政府が輸出認可済み工場の調査を済ませずに解禁した判断への批判にもつながっている。民主党にとっては追い風だ。


自民党も2月10日に松岡利勝衆院議員を団長とする調査団を米国に派遣、民主党が視察した工場を回った。14日の記者会見では、撮影した工場の作業風景のビデオを上映しながら「月齢の判別も特定危険部位の除去も日本の輸入条件に沿って行われている。きちんと作業している食肉加工業者はいる。問題なのは、米農務省のずさんすぎる監視体制だ。責任ある与党として、日本政府の対応にも不満がないわけではない」との見方を示した。


もっともこれで即、輸入解禁となる情勢ではない。もし米国産牛肉が輸入再々開となっても、「誰が買ってくれるのか」という不安が食肉業界関係者の間には募っている。「日米政府が商売を邪魔している」。あるタイソン幹部の嘆きは本音だろう。(戸田 顕司)

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