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松下流CSRが生んだ余波、暖房機事故の陰で起きた「意外な出来事」

2006年1月27日

「(一酸化炭素中毒事故が相次いでいる)松下さんの一件で、FF(強制吸排気)式の暖房機がすべて危険だと誤解されないか心配していたけど、杞憂だったようだ。うれしい誤算と言ったら叱られるかもしれないけど」


こう明かすのは、ある暖房機器メーカーの関係者。同社のFF式暖房機は昨年12月から売れ行きが好転、前年同月の2.5倍を記録したという。


「姉歯問題」でマンション全体に不信の目が向けられたように、1社の不祥事は業界全体にマイナスの影響を与えかねない。松下電器産業の一件でも同業他社はほぞを噛んでいるかと思いきや、現実はその逆のようなのだ。


寒波だけが理由でない販売増


三洋電機や三菱電機、コロナといった、問題の暖房機と同形式の製品を販売しているメーカーの売れ行きはすこぶる良い。暖房機器の業界団体である日本ガス石油機器工業会のまとめによると、昨年12月時点で件のFF式暖房機の販売実績は、前年同月比でやはり2.5倍に伸びている。三洋のように「急遽増産を決めた」ところもある。


20年に1度とも言われる寒波の影響があったのは確かだろう。だが、それに加えて「松下の一件が結果的にプラスに働いた」との声が聞かれる。


こうした見方が広がっている背景には、販売台数が12月に入ってから急に増えたことがある。FF式は室外から空気を取り込み、排ガスを排出するためのパイプを設置する工事が必要だ。「暖房能力が高い大型商品が中心で最低でも10万円程度はする。小型暖房機のように気温が下がったからといって急に売れるような商品ではない」と各社は口を揃える。


例年なら寒さが厳しくなる前の10月や11月に売れ行きがピークになる。今年はそれが12月に来た。


12月といえば、松下が問題の製品を1台5万円で買い取るという新しい対策を打ち出した時期と重なる。松下が修理・対応を終えたはずの製品で新たに死亡者が出たためだが、回収に協力した利用者の多くは、他社の暖房機器を購入するしかない。松下は石油暖房機器から全面撤退しているからだ。


東京などでは家電店の店頭でもめったに見られないFF式だが、暖房効率が高い割に燃料代が安く済むこともあり、北海道や東北などでは「FF式を使っていた顧客が、買い替えるならもう一度FF式を選ぶというのは自然な流れだ」(東北地方を地盤とする家電量販チェーンの店長)。


このチェーンも今シーズンはFF式が例年にないほど売れたという。「『松下からの買い替えだ』とはっきり言う人もいた。FF式が排ガスを室外に出す方式だとCMで初めて知って、『石油ファンヒーターなどより、空気が奇麗になっていい』と言う人もいた」。


知名度上がった郵政サービス


思わぬ追い風を受けることになった中には、日本郵政公社も含まれる。


松下は2月中旬から、全国の家庭5000万世帯とホテルや旅館など1000万施設に、危険性を知らせるはがきを郵送する。宛名を書かなくても郵便局の管轄区域内の全戸に届く新サービスを利用する。昨年9月に開始したばかりで、利用実績もまだほとんどない。マンションの郵便受けなどに広告チラシを配布するポスティングサービスの郵政公社版だが、対象を全国に広げられる意外性が話題となり、問い合わせが急増。「報道を境に認知度がぐんと上がった」と担当者は語る。


「最後の1台まで見つけ出す」。中村邦夫社長の決意で回収に取り組む松下。今回の件は、一社のCSR(企業の社会的責任)が思わぬ形で波紋を広げることを物語る。(安倍 俊廣)

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