肥満の人は2割も医療費が高くなる!?
前回、米国では、「肥満」が医療費を高騰させているという現状について述べました。
東北大大学院医学系研究科公衆衛生学分野の辻一郎教授らが、宮城県にある1保健所管内の1市13町に居住する40〜79歳の国保加入者5万6294人を対象に調べた研究によると、やはり、「肥満の人は医療費が高い」という結果が報告されています。

日本では、BMI(体格指数)が21〜23の人の医療費を100%とすると、BMIが30以上の人は、2割くらい医療費が高くなるというのです(表1)。他の国でも、BMIが30以上の肥満が総医療費に寄与する割合は、米国で7.0%、ニュージーランドで2.5%、オーストラリアで2.0%と報告されています。
では、なぜ太っていると医療費が高くなるのでしょうか? これは、肥満の人は大きな病気にかかりやすいことによります。肥満の人の疾病発症率を正常体重の人と比べると、糖尿病は約5倍、高血圧は約3.5倍、胆石症や不妊症は約3倍、痛風は約2.5倍、心臓病は約2倍、関節障害は1.5倍になるといわれます。
そのほか、最近テレビなどでも話題になっている「睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)」なども起こしやすくなります(参考記事:肥満ぎみの人は“危ないイビキ”に注意)。肥満自体に医療費がかかるというよりも、肥満に起因する病気によって医療費が高くなるというわけです。

このような状況を受けて、2005年4月8日の日本内科学会総会では、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の診断基準が公表されました(参考記事:男性85/女性90cm以上のウエストは要注意)。これは日本動脈硬化学会や日本糖尿病学会など、8学会がまとめたものです。

診断基準では、ウエスト周囲径が男性では85cm、女性では90cm以上で、かつ、表2に示した3項目のうち2項目以上あてはまるものを「メタボリックシンドローム」と定義しています(表2)。このような状況では、動脈硬化が促進され、将来的に脳梗塞や心筋梗塞といった病気になりやすいというのです。
この診断基準のポイントは、いままでのように高脂血症や糖尿病といった病気だけではなく、“ウエスト”という形で、肥満に注目したことにあります。また、もともと縦割りであった学会が横断的に基準を作ったことも評価されています。
禁煙運動が世の中に定着してきた昨今、今後は「やせよう」運動が、全国的に展開される日が近いかも知れません。
〔用語解説〕
BMI:body mass indexの略。体重(Kg)÷〔身長(m)〕2。
睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に上気道の緊張感が緩んで狭くなるため、上気道が完全に閉塞し、睡眠中に何回も呼吸が止まってしまう病気。この軽いものが“いびき”である。

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