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夏の多汗症に「黄耆建中湯」

2005年08月05日

 暑い夏の盛り、外出する機会が多い営業職のビジネスパーソンにとって、汗は悩みの種である。人間の体は、周りの温度が上昇すると汗をかいて体温を一定に保つ調節作用が働く。とはいえ、気温が上がるにつれて、額から首、腕へとしたたり落ちた汗が、身につけている服やシャツにしみ込んで汗じみになったりしたら、もう最悪である。



 しかし、特に気温が高くもないのに、多量の汗が出てくる場合は「多汗症」である。多汗症とは、体温調節を目的に汗を分泌するエクリン腺の働きが亢進して汗の産生が増加し、皮膚の表面に放出される量が多い状態のことをいう。



 多汗症には、全身性と局所性があり、全身性は汗を全身にかく状態のことで、中枢神経系の異常、甲状腺機能亢進症、循環器疾患、内分泌異常、代謝異常などの病気が原因の場合がある。また、周りの温度が高い場所で仕事していても起こる。局所性は顔、手のひら、足の裏、腋の下など、体の特定の部位に強く汗をかく状態を指す。



 全身性の多汗症は、原因となる病気を治療すれば治るが、局所性の多汗症は、精神的、神経的なことが原因である場合が多く、決め手となる治療法もない。そのため、緊張しないようにする、あまり暑いものや辛いものを食べないようにする、といった生活上の注意のほか、制汗剤の利用が勧められている。



全身性と局所性で異なる漢方を選択



 漢方医学では、気力が落ち、疲れやすい「虚証」の人に多汗症が多くみられることから、それに応じた薬方薬を選んでいく。

 よく使われるのが、「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」などである。いずれの薬も発汗の調節作用があり、体表面に生じた虚証を治し、体表の水毒を除いて、体力を回復させる「黄耆」を含んでいる。



 黄耆建中湯は、一般に体力が虚弱な人で、疲れやすく寝汗をかく人に対して使う。防已黄耆湯は、皮膚の色が白く水太りの人に多くみられる多汗症を対象とし、疲れやすく尿の出方が悪く、よく汗をかいて困るといったときに使われる。十全大補湯は、大病の後や、慢性の病気があって疲労、衰弱しているときの寝汗の悩みに効くとされている。



 また、精神的、神経的な要素がかかわっている多汗症に対しては、気の異常を治す桂枝、牡蠣、生姜などを含む「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」などが使われる。



 補中益気湯は、消化機能が衰えて四肢に倦怠(けんたい)感があり、著しく体力が落ちている時の多汗症を適応とする。柴胡桂枝乾姜湯は、虚弱体質で神経過敏な人で、食欲もなく尿の出方も少なく、気が高ぶり頭皮に汗が多いときに用いる。



 汗と漢方は、なかなか結びつかないかもしれないが、症状によっては医師、薬剤師などと相談し、試してみるのもよいのではないだろうか。



(天野 宏=医療ジャーナリスト)





イラストレーション/川崎のりこ(PLUM GRAFIX



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