ど忘れには“それなりの理由”がある
「ええと、あれ? 何ていうんだっけ……」。いつも使っている言葉のはずなのに、思い出せないことはありませんか?
“ど忘れ”はよくあることですが、ど忘れが出ると、「もしかしてボケが始まったのではないか」と心配する人も少なくないようです。しかし、ど忘れの多くはボケでもなんでもありません。ど忘れするには、それなりの理由があるのです。
例えば、家族と別居中のAさんは、会社の書類に自宅の住所を書こうとしたとき、どういうわけか番地を思い出すことができませんでした。「そんな馬鹿な」とあせればあせるほど、頭の中は真っ白になります。
この場合、Aさんが家族のいる自宅の住所を思い出せなかったのは、ど忘れというより、別居の原因となった奥さんとのケンカなどの記憶がよみがえるのが嫌で、普段から思い出さないように抑制していたからです。
ど忘れは、脳の記憶から消し去られたわけではありません。Aさんのケースのように、思い出したくないという潜在的な意識が働くために、思い出せないこともあるのです。時には、その思い出したくない理由さえ、分からないことがあります。

一方、自分がよく知っている、分かっていると信じている言葉なのに、すぐに思い出せないのは、実は最近あまり使っていなかった、ということもよくあります。
記憶には、新しいことを覚えるいわゆる「記憶」と、覚えていたことを思い出す「想起」の2つがありますが、ど忘れは「想起」、つまり思い出す能力の低下を意味します。ど忘れは、いつも使っているように思えても、実はあまり使っていない単語が、記憶から出にくくなっている状態でもあるのです。
使っていなければ、いくら自分が知っていると思っていても、すぐに言葉が出なくなるのは当然のことでしょう。しかし、その意識がないので、どうしてすぐに思い出せないのかあせりを感じ、「ど忘れした」と思ってしまうわけです。
このように、ど忘れのもう1つの原因は記憶の希薄化です。したがって、どこかでまた印象づけを行えば、すぐに思い出せるようになります。
なお、一度ど忘れの迷路に入ってしまうと、同じ思考回路を繰り返してしまいがちなので、いくら思い出そうとしても、思い出せません。この場合、思い出す場所と時間を変えてみることも大切です。すると、簡単に思い出せることが多いのです。
ど忘れは必ず思い出せます。しかし、使わない言葉は思い出しにくくなる――、このことは忘れないようにしましょう。

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