中国医薬品市場の攻略なるか、伊藤忠などが中国企業に出資
日本で製造した医薬品を今秋から中国国内で本格販売する初の卸売会社に、医薬品卸3位のアルフレッサホールディングスと伊藤忠商事が出資することが本誌の取材で明らかになった。10月に、第1弾として佐藤製薬のニキビ治療薬などの大衆薬を発売する。中国医薬品市場は2010年に日本を抜き世界第2位の規模に成長すると見られ、製薬企業の巨大市場への進出に弾みがつく。
事業主体となるのは、中国最大の製薬企業である三九企業集団(広東省)の日本法人、三九製薬が資本金100万米ドルで広東省恵州市に設立した日美健薬品有限公司。アルフレッサと、三九製薬の株主になっている伊藤忠は、事業開始に向けて日美健が実施する600万米ドルへの増資の一部を引き受け、それぞれ15%を出資する計画だ。
輸入と販売で2つの特権
中国の医薬品市場は、沿岸部を中心に急速に拡大している。中国国家統計局の発表によると、2003年の医薬品工業生産高は前年比2割近く増え3876億元(約5兆4000億円)に達した。漢方薬や大衆薬の割合が大きいのが特徴だが、医療用医薬品も既に1兆円を超え、今後は先進国同様、さらに拡大が見込まれている。
急成長市場に乗り遅れまいと、日本勢でもエーザイや三共などが中国で工場を設置している。
各社は現状、中国内での製造品目が限られ、国外で製造した製品も導入せざるを得ない。ところが外資系の製薬企業には臨床試験を実施して政府から新薬の販売認可を得ても、中国内で製造した製品でなければ自社販売できないという規制がある。このため、中国生産以外の医薬品は中国籍の会社に販売委託しており、「思い通りにマーケティング戦略を実行できない」(メーカー担当者)のが実情だ。商習慣の違いもあり、黒字化した企業は少ない。
日美健の最大の強みは、中国全土であらゆる種類の医薬品を取り扱うことができる「一級卸」であるうえに、中国外で製造した医薬品を中国に輸入する権利を持っていることだ。つまり、日本勢も日美健を介すれば、日本で製造した医薬品を中国で自社のMR(医薬情報担当者)を使って販売できる。
日本側の窓口はアルフレッサが担当し、製薬各社は円での決済が可能だ。医薬品に限らず、中国での流通は常に債権回収リスクがつきまとう。その点でも、日本国内と同じような卸機能を持つ日美健のメリットは大きい。
特権的な権利が日美健に認められた背景には政府の思惑もあるようだ。
2001年12月にWTO(世界貿易機関)に加盟した際、中国政府は3年以内に流通市場への外資参入を公約。昨年12月に外資系流通企業に対する出資制限を撤廃した。ただ、国益に直結する分野は一定の影響力を確保しておきたいのが本音との見方がある。
中国から見れば三九製薬も外資系となる。西村一郎会長兼CEO(最高経営責任者)が43%近くの株を保有し、三九企業集団の持ち株比率は伊藤忠と同じ23.1%。株式の大半を日本側が握っているからだ。それでも、三九企業集団を通じて政府の意向も反映できるからこそ、三九製薬に特権的な権利を与えたと解釈できる。
「軍御用達」の太いパイプ
日美健にはもう1つ強みがある。人民解放軍や警察関係の病院への販売ルートを持つことだ。三九企業集団は軍関係の医大で働いていた幹部も多く、「軍御用達の製薬企業と認識されている」(関係者)。中国全土に2万近い医療機関があるが、中国で使用される医薬品の2割近くが限られた軍や警察関係の大病院で消費され、中国市場での成功は軍抜きでは考えにくい。
西村会長は「2010年には1500億円の売り上げを目指す」と大目標を掲げ、来年には、医療用医薬品の取り扱いも始める。
米ファイザーの「バイアグラ」の特許が突然取り消されるなど、欧米の巨大製薬企業でも攻略に手を焼く中国市場。日美健が橋渡し役になれば、日本勢に強力な販売ルートを確立する道が開けることになる。(坂田 亮太郎)
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