中国からインドネシアへ、ヤマハが2輪車販売の軸足を移す「事情」
ヤマハ発動機が来年1月の稼働を目指し、ジャカルタ市から50kmほど離れた工業団地に、インドネシアで2番目となる2輪車工場の建設を進めている。当初単一車種を年間30万台生産、2007年にはジャカルタ市内の工場から、当該車種の生産を移管し、60万台に引き上げる計画だ。
既存工場も今年既に生産能力を88万台から120万台に増強しており、2年後にインドネシアはヤマハ発動機として「世界最大の生産拠点となる」(現地生産会社の高橋吉輝社長)。
インドネシアは昨年、日本の5倍強に当たる380万台の需要があった世界第3位の2輪車市場。今年500万台を超えると見られ、成長力も大きい。ヤマハ発動機は既に21%のシェアを握っており、生産強化に動くのも納得がいく。
とはいえ、世界最大の2輪車大国でもある中国の1220万台と比べ市場規模は半分にも満たない。アジアでホンダの後塵を拝するヤマハ発動機だが、その中国では昨年、合弁企業の統合に伴い販売も一本化した。今後、部品供給センターも集約する計画。両国での対照的な動きは何を意味するのか。
価格競争と需要抑制策ネック
「中国でのビジネスには課題が多く、昨年のシェアは2.3%しかなかった」とヤマハ発動機は説明する。2004年販売実績は28万5000台で前年より4000台減り、明らかに苦戦を強いられている。
理由は2つある。1つは価格競争だ。
中国では現在、150社以上の地場の2輪車メーカーが乱立する。各メーカーは、日本製2輪車に似せた商品を製造し、4000〜5000元(約5万2000〜6万5000円)ほどで売る。ヤマハ発動機はコスト削減を進め、1990年代半ばの半値以下に下げた。それでも、8000元(約10万円)前後し、一定の品質を確保するために、これ以上コストを切り詰めることは難しいという。
ライバルのホンダは価格競争に対応し、低価格車を製造するメーカーとの合弁で5000元台の製品を投入している。だが、ヤマハ発動機は仮に同様な形で値段を下げられたとしても、内陸部の所得が低い地域での販売が多くなるため、利幅は薄いと見る。
もう1つは、高所得者層の多い沿岸都市部における需要抑制策の影響だ。
交通渋滞などの対策として、97年から2輪車のナンバープレートを新規に発行しない都市が出始め、上海や広州など80近い都市に広がった。2輪車の走行を禁じているところもある。
都市部に住む若者を中心に顧客開拓する手法を基本とするヤマハ発動機の市場戦略が、現地の事情にそぐわなくなったわけだ。沿岸部に隣接する地域で販売を強化する考えだが、そこでも都市部との経済格差はあり、地場メーカーとの厳しい戦いが避けられない。
シェアよりブランド確立狙う
一方、タイ、インドネシア、ベトナムの3カ国では「今年、前年比39%増の188万台の販売を見込む」(飯尾俊光ヤマハモーターアジアセンター社長)と鼻息が荒い。もっとも、シェア争いには慎重で、高付加価値ブランドを確立し、差異を鮮明にする構えだ。
例えばタイでは、顧客ターゲットを24歳以下に絞り込み、カフェやインターネットコーナー、アクセサリー売り場などを併設した新型店舗「ヤマハ・スクウェア」を展開。若者に情報発信できる販売網を全域で構築する。
東南アジア初となるスクータータイプのAT車を先行して市場に投入する商品戦略も、他社との違いを打ち出し、従来少なかった女性客を取り込む狙いがある。特にインドネシアでは女性ユーザーが1割強にとどまっており、「女性を主眼に開発したAT車種も用意できている」と高橋社長は話す。
タイ、インドネシアでは今、在庫期間が1カ月を切る。そこに主戦場を移すヤマハ発動機の選択は果たして長期的にも「吉」と出るか。(江村 英哲)
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