トヨタが業界最速の8カ月で新車開発へ、設計システムを大幅強化
トヨタ自動車が新車開発に使用するCAD/CAM(コンピューターによる設計・製造)システムを年内にも大幅に強化し、開発期間を2〜3年後に最短8カ月まで短縮する計画を進めていることが、日経ビジネスの取材で明らかになった。これまでは新車開発に平均12カ月を要しており、実現すれば、業界最速となる。最新のIT(情報技術)を活用して設計工程における効率化をさらに推し進め、製造だけではなく、設計のグローバル化にも対応する狙いだ。
部品データの収集でミス多発
トヨタが強化するのは、新型車両のバーチャル開発システムである「V-Comm」。車両デザインのほか、部品の擦れ合い(配置干渉)や生産ラインに流した時の作業員の作業性の検証など、従来試作車で行っていた作業をコンピューター上でシミュレーションできるのが特徴だ。2000年2月に発売した「bB」から車両全体の設計に利用している。
今回、バーチャル開発の機能を強化することで、エンジンやシャシーなど車両のベースとなる部分を共用する共通プラットホーム車の開発期間を、まず、すべて9.5カ月間にする。2〜3年後には最短8カ月に縮めることを目指す。「マーチ」と同じプラットホームで開発した日産自動車の「ノート」の開発期間が同社最短の10.5カ月間であることを考えると、相当に意欲的な目標だ。
この目標を可能にするのが、V-Commに新しく導入する、部品データの管理システムである。トヨタは、図面設計と生産ラインの作業効率の検証に、仏ダッソー・システムズ製のソフトを採用している。新たに導入するデータ管理システムもダッソー製のソフトをベースにする。現在、同社とトヨタが共同で開発しており、年内をメドに導入する。
1つの車の部品数は平均で3万点。バーチャル開発で利用する部品データは開発に関わる各部門が日々更新しており、それ以上に膨れ上がる。検証作業の際、これまでは、関係各所に電話やファクスで最新の部品データを確認しながら、車を構成するすべての部品データを手作業で収集していた。
そのため、「画面上では部品干渉が生じず、データの整合性も取れているのに、米国にない部品データを米国生産車の開発で使用していた」といったミスが頻繁に起きていた。最後の試作車での検証段階で気づくものの、その結果、手順が戻ることによって生じるロスが大きかったという。
データ管理システムを導入することで、これらの問題を根本的に改善できる。開発プロジェクトごとに部品データのセットが最新の状態で保管されるため、これまで平均3日間かかった部品データの収集作業は瞬時に終わる。コンピューター管理されているため、ミスもなくなる。
トヨタ自動車コーポレートIT部の吉見淳一主査は今回の目的を、「新車開発に関わる設計部門や生産部門の数百人の人間が、正確な情報を瞬時に共有できるようにすることがゴール。相互に相手の作業をリアルタイムで把握できれば、無駄な作業もミスもなくなる。開発期間の短縮は結果論であり、あくまで、作業の効率化と正確性を期すことが最大の目的だ」と語る。
現地生産から現地開発へ
トヨタが情報の共有を急ぐ背景には、急速に進む自動車産業のグローバル化がある。トヨタはこれまで、ほとんどの車種の開発を日本で行ってきたが、現地のニーズに合った車種を素早く投入するためには、生産だけではなく、設計のグローバル化も急務と判断した。日本の開発拠点と海外の開発拠点で同じ部品データを利用しながらバーチャル開発を進めるには、今回のデータ管理システムが必須だというわけだ。結果、開発期間も短縮できる。「米ゼネラル・モーターズ(GM)を捉えるために最低限必要な条件。世界最強の開発システムを作る」(吉見主査)。ITの裏方も世界一に向けて突き進む。(井上 理)
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