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「大和のお粗末、リーマンの貪欲」、ライブドアのニッポン放送株取得

2005年2月22日

ライブドアが2月8日にニッポン放送株の35%を取得を発表した後、沈黙を守ってきた大株主がいる。ニッポン放送株の約19%を持つ村上世彰M&Aコンサルティング代表だ。その村上氏が日経ビジネスの取材に応じた。


ライブドアに保有株を売却したかという本誌の問いに、村上氏は「ファイリング(大量保有についての変更報告書)を見れば分かる。(ファイリングをしなければならない大量の株式売却は)ない」と否定した。村上氏によれば、堀江貴文社長は以前から「売る気はありますか」と打診していたという。だが村上氏は「僕はファンドマネジャー。常に高い値段を提示してもらえれば、検討します」と答えるにとどめ、売却に応じなかったと主張する。


「TOB票読みしない」と大和


では、これまで明らかにされることがなかったライブドアの購入先はどこか。ニッポン放送への大口投資家のうち固定株主を除くと、残りは国内外の信託銀行管理分(実質株主は不明)と米系投資ファンド2社が残る。開示されている情報を見る限り、それらが持つ株式を購入したとしか考えにくい。


そもそもニッポン放送を巡っては、歪な親子関係を解消するためにフジテレビジョンが1月からTOB(公開株式買い付け)を始めていた。そこに割って入ったのがライブドア。なぜ大口投資家はフジテレビに売らず、ライブドアに売ったのか。そこから浮かんだのは、フジテレビとライブドアのそれぞれについた証券会社の明暗だった。


フジテレビによるTOBのアドバイザーとなったのは、大和証券SMBC。統合話が浮上している大和証券グループ本社と三井住友フィナンシャルグループが、1999年に出資比率6対4で設立した法人向け証券会社だ。


フジテレビが提示した買い付け価格は5950円だった。ところが、ライブドアは約6100円と、フジテレビの買い付け価格を150円程度上回る価格で一気に株式を集めた。フジテレビによるTOBを円滑に進められなかったこと。そしてライブドアの横やりを許したこと。大和は2つの致命的なミスを犯した。


大和の幹部は「TOB価格は適正。株主の票読みなど事前にしない。次の手はいろいろと考えている」と強気な姿勢を崩さない。しかし、大和が入念な準備をしてTOBを成功させていれば、次の手を考える必要もなかった。


大和はニッポン放送株の8%を持つ大株主でもある。ニッポン放送創業家の鹿内宏明氏らが保有していた株式を購入した分で、いずれはそれをフジテレビに売却すると見られる。フジテレビ経営陣にとっては目の上のこぶとも言える存在だった鹿内家から株を取得したことは、ニッポン放送へのTOBにとってハードルを越えたことを意味する。大和とフジテレビはここで安心してしまったのではないか。


倒産しない限り利益は保証


お粗末という批判を免れない大和と対照的なのが、ライブドアによる電光石火のニッポン放送株取得を助けた米投資銀行のリーマン・ブラザーズだ。


リーマンはライブドアのCB(転換社債型新株予約権付社債)の引き受けにより、800億円を同社に投資した。売上高100億円のライブドアにその8倍もの資金を投じたことで、リーマンは気前のいい投資家に映る。しかし、その取引構図を見ると、利益への執着ぶりがよく分かる。堀江社長ばかりが目立つが、資金提供などを仕組んだリーマンこそが陰の主役だ。


リーマンによるCBの引き受けには複数の条件がある。


まずリーマンはCBをライブドアの株価より常に10%低い値段で、普通株に換える権利を持つ。仮に株価が380円だったらリーマンはCBを342円で株に換えられ、そこで売れば38円の利益を得られる。


しかも転換価格は週に1回、修正される。リーマンは株価の状況に応じて転換し、タイミングよく売買できる。


さらにリーマンとライブドアの堀江社長にはCB発行以外の契約もある。それは堀江社長が持つライブドア株(2憶2000万株保有)をリーマンに貸し出す、というものだ。貸し株数は「大量ではない」(リーマン関係者)というものの、リーマンはこの株券を市場で売ることができる。仮に380円で売りをかけて、株価が280円になって買い戻せば、100円の利益が出る。このように、リーマンはライブドアへの投資に関して、儲けが出せる仕掛けをいくつも仕組んでいる。ライブドアが倒産するような事態が起きない限り、リーマンは利益を得られると言える。


加えてリーマンの功績は、ニッポン放送株を持つ海外投資家を説得し、ライブドアとの取引仲介を手がけたことだろう。リーマンは「(仲介を)やったともやらないとも言えない」としているが、有力な誰かのお膳立てなしで、短時間の大量売買はできない。投資助言や仲介に関われば、リーマンはライブドアから手数料も得られる。


ライブドアの登場を受けて、フジテレビはTOBによる目標取得比率を25%に下げた。フジテレビとニッポン放送がお互い25%ずつ持ち合えば両社間での議決権行使ができなくなる。ライブドアがニッポン放送を通じてフジテレビに影響力を持つのを抑えられる。しかし、ライブドアの堀江社長も「ニッポン放送の増資を考える」と対抗手段を口にする。


今後の注目点は、何と言っても村上氏の動向にある。なぜなら村上氏がフジテレビによるTOBに応じるか、またはライブドアへ売却するかで、勝敗が決まるからだ。今年6月のニッポン放送の株主総会は、3月末時点の株主の持ち株比率を基に議決する。3月末に向けて、フジテレビとライブドアによる村上氏へのラブコールが高まりそうだ。「(儲けを狙う)ファンドマネジャーとしてはありがたい限り。これは面白い」と村上氏は余裕さえ見せる。


ライブドアの正念場


一方で「人生を賭けている」とする堀江社長は、財務状況から見ると正念場だ。2004年4月には1株当たり638円で増資をした。今回のCBの転換価格は450円。リーマンに有利な条件をつけたのは、株価の下落が背景にある。


今回のCB発行も計算上、リーマンが最低転換価格(157円)で普通株に転換したら5億株も増える。現在の発行株数である6億株の約2倍で、株価の下落要因にもなる。


市場でささやかれるのが、リーマンの下落作戦。まず堀江社長から借りた株を売る。売り圧力で株価が下がりきったら、CBを株式に換えて、堀江社長に返す。その差額が儲けになる。こうして「株価は157円まで下がる可能性もある」(証券アナリスト)。そうなればライブドアや同社の個人株主にとり、リーマンは脅威になる。


株価が下落して資金調達が難しくなれば、ライブドアは苦しい。堀江社長が連日、テレビに登場して「高成長のIT企業」のイメージを振りまくのも株価対策にほかならない。堀江社長にレギュラー番組の出演機会まで与えていたフジテレビが、標的にされたのはまさに皮肉としか言いようがない。(酒井 耕一、大豆生田 崇志、篠原 匡)

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