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「ブログがオールドメディアを変える」、Jerry Michalski氏/ Yi-Tan Collective代表

2005年2月14日

(石塚 朝生)


メディアの世界にもダーウィンの進化論があてはまる



■ブログやWikiの社会的影響についてご意見をお聞かせください。



既存のメディアを「オールドメディア」とすれば、ブログやwikiなどは新しいメディア、「ニューメディア」と言えます。いま、両者の間にインタラクション(相互に影響しあうこと)が起こっています。オールドメディアが取り上げた記事に対して、「これは素晴らしい記事なので読むべきだ」、あるいは「どうしようもないクオリティの記事だ。どうしようもない理由はこうだ」などとニューメディアが指摘する現象がまず起こりました。非常に興味深いことです。



「○○を読んだほうがよい」というレコメンデーションは、素晴らしいアイディアを広めるのに役立ちます。自分の注目する記事や情報を薦めることで、その考えがさらに多くの人に参照されるのです。



Jerry Michalski氏/ Yi-Tan Collective代表




一方、どの情報が無視されるかも決まっていきます。オールドメディアが発信した記事に対する否定的なコメントは、書き手と発行元にとって危機になっています。否定的なコメントを発した人物は単に風変わりな人物であったかもしれません。また、誤った判断に基づいて記事を批判したのかもしれない。ですが、それが原因で、その出版物を人々が読まなくなり、やがては消滅してしまうかもしれないのです。



この過程は、「ダーウィンの自然選択説が成り立つ市場原理」が現れる場として捉えることができます。つまり、それぞれの状況に適応した最良のプレーヤーがトップに立つわけです。



ここで肝要なのは、よい記事が生き残ることを助長するよう、メカニズムを改良し続けることです。ブログのサーチ・エンジンとクロス・レファレンスは、ニューメディアの進化にとっても、ニューメディアとオールドメディアとのインタラクションにとっても必須のものです。



未編集のコンテンツが要求される



■ニューメディアからの批判によって、オールドメディアはどのように変わるでしょうか?



例えば報道機関は、持っている情報をさらに公開しなけらばならなくなるでしょう。インタビューのメモや、未編集の映像、録音テープ、画像などを読者が要求し出すでしょう。いずれ、すべてを見たいということになる。現在はまだそのようなことにはなっていませんが…。



既存のニュースは、ますます、「新しいニュース」として機能しなければならなくなるでしょう。



リンクについて言えば、今日でも、ニュース記事に多くのリンクが見られます。最も単純な例としては、起業に関する記事における株価情報へのリンクがありますね。また、以前掲載した記事へのリンクや、他の人々によるコメントへのリンクなどもあります。正にブログを書くのと同じです。



通常、ブログに掲載される情報には多くのリンクがあります。優秀なブロガーは多くのリンクを付けています。リンクがあると、少ない言葉で多くを説明することができので、リンクは、書き手の作業を容易にするパワーがあります。リンクを多用する書き方をブログライティング・スタイルと呼ぶこともできるでしょう。



■ブログがこれだけ社会的影響を持つに至ったポイントとして何が挙げられますか。



それは、自分の意見をブログで表明するのに、コストがほとんど掛からないことです。パソコンを所有する必要もありません。インターネット・カフェなどでパソコンを借りればいいのです。少々の使い方の知識と時間が必要ですが、やがては、もっと簡単になるでしょう。



新聞にせよラジオにせよ、世界に情報を発信するための能力、資金、配布チャネルは、ごく少数の者だけに許されたものでした。大型の印刷機を所有することや、ラジオ放送局と送信設備を所有することは非常に高価だからです。政府は、例えば使用可能な電波の範囲を制限することによって、その少数独占状態を助長してきたのです。このことにより、限られた数の出版社や放送事業者しか存在しない状態が保たれてきたわけです。



普通の人々が、自分の言葉でアイディアやプログラムなどを発表する。それらに出会ったほかの人々がインタラクトし、さらに別の人々に転送する。こういうことは、今まで不可能でした。普通の人々がインターネットに情報を公開できるようになったことは、今後長期間にわたって、われわれの社会に非常に大きな変質をもたらすと私は信じています。



パーソナルWebをはじめとして、ブログとWikiは、これを実現する初期の技術です。ブログが興味深いのは、読み書きを容易にする単純な構造を持っていることです。書いた記事を時間どおりに並べて表示するとか。



Wikiは、コラボレーションを行う強力なパワーを持ち、人々が共同作業でコンテクストをつくるのに力を発揮します。短命なニュースでもない、ブログのように時間がたつとフロント・ページから消えるものでもない。Wikiでは、コンテンツを構成するすべてを自分の好きな位置に配置できます。



既存のメディアはブログを無視できない



■ニューメディアの台頭で、オールドメディアの存在価値がなくなりますか?



なくなりません。ニューメディアが力を持つようになっても、現状のマスメディアを放棄しようということにはなりません。ブログなどが起こしている新たな現象が、既存のマスメディアをどう変えていくかが重要です。



既存のマスメディアは、ニューメディアに反応して、変化しなければなりません。無視することはできないのです。多くの場合、訂正記事を掲載したり、記事の掲載を中止したりする結果になることもあるでしょう。しかし、ニューメディアの影響が、オールドメディアに新しい記事を誕生させることもあるでしょう。 



指摘したいのは、新しい技術が登場しても古い技術を殺すことないということです。新しい技術は、力関係を変化させ、人々の利用パターンを変えるだけです。新しい可能性を切り開きもすれば、つぶしたりもします。



例えば、自動車は鉄道を抹殺しなかった。自動車は私たちの移動能力を拡張しただけです。また、テレビはラジオを殺さなかったのです。ラジオも、新聞を殺しはしなかった。私たちは、これらを今日でも利用しています。すべてはお互いに変化しただけです。そして現在は、インターネットが、これらのオールドメディアを大きく変えようとしています。



ブログが人々の判断を助ける



■ブロガーが書く記事の公平性や規範は、オールドメディアのそれと、どう違うのでしょうか。また、それは、人々の価値判断にどう影響しますか。



ジャーナリスティックな規範や手法、つまり、ジャーナリスティック・プロセスには、大きな価値があります。今や、このようなプロセスはジャーナリストだけのものではありません。ブロガーの中には、自分をジャーナリズムの規範に則ったジャーナリストであると考える人もいます。これは非常に興味深いことです。ただし、独断的なブロガーもいます。



ジャーナリスティック・プロセスの上位にエディトリアル・プロセスが存在します。新聞やWebのトップページに何を掲載するかを決めるのがこのプロセスです。このエディトリアル・プロセスも大きな価値を持っています。中立的な判断ができる、博識な人々が決定しているのです。



問題なのは、既存の出版物が正しい判断をしていないケースがあることです。ジャーナリストが間違った判断をすれば、ジャーナリスティック・プロセスが機能しないケースにつながります。そうなると、エディトリアル・プロセスが破綻してしまいます。



Washington Timesは、非常に保守的な論調です。Fox Newsも非常に保守的な編集方針
を持っています。このようなメディアのエディトリアル・プロセスは、中立性からは
ほど遠いものです。読者は、望んでもいない、公平性と中立性に問題のある記事を読
まされることになります。



もし、新聞やテレビ、ラジオなどにおいて、ジャーナリスティックな完全性やモラルが損なわれた場合、ニューメディアが活躍する場が広がります。ブロガーやWikiを書く人々は強い意見を持っていて、たいていの場合、その意見をブログやWikiに書きます。ネットにはこうした多くの意見が書かれるので、それらを読む人々は、それぞれの話を多少割引いて読むわけです。読者はいろいろと判断できるのです。



オールドメディアでは、意見があれば、編集長へ手紙を書いた。配達されるのは3〜4日後。新聞社でさらに3〜4日かかって、やっと掲載されるわけです。最初の記事が出てから1週間以上かかる上、そもそも、配達された手紙のごく一部しか掲載されないのです。



ニューメディアが影響を持つ新しい世界では、インタラクションのスケールとスピードが驚くほど異なっているのです。



このようなスケールやスピードでコメントを読むことができなかった時代は、もしCBSやTime Magazine、Washington Timesが、「これが信頼すべきものだ」と言ったら、読者はそれを受け入れざるを得なかった。



■ニューメディアは監視役の役割を果たすということですか? CBSのニュース・キャスターDan Ratherのケースはその例ですか?



そうです。ブッシュ大統領の州空軍経歴に関する誤報は非常に不可解なものでした。共和党所属のTrent Lott上院議員のケースは典型的なものです。



Lottは、2002年12月20日まで上院多数党院内総務を務めていました。彼はある集まりで、人種差別的発言を軽率にもしてしまったのです。そのときの発言を、メディアは取り上げませんでした。



しかし、当初C-SPANで放送されたこの発言を、Josh MarshallのTaking Points Memoなど少数のブロガーが取り上げ始めたのです。多くのブロガーが事の重大さに気づき、さらに活発な論議が行われ、5日後にはメジャーなニュースで取り上げられました。最終的に、彼は院内総務を辞任することになったのです。



■Jerry Michalski 氏のプロフィール

戦略コンサルタント。テクノロジー、社会、ビジネスが相互にどう影響しあうかを主要なテーマに据えている。Yi-Tan Collective (Yi-Tanは、変化についての会話の意味)を経営 同社のホームページ


■その他のインタビュー記事はこちら

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