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Webマーケティングの近未来 第26回〜欧米での企業ブログのケーススタディ(その6)

2005年2月10日

最悪のブログキャンペーンを検証する



今までこのコラムでは、ブログがどれだけビジネスに、特にマーケティング・PRに使えるか、という話をしてきた。安い経費でできること、検索エンジンの上位に上がりやすいこと、RSSフィードがあること、他のブロガーと対話ができるということ、その対話を通して話題が広がっていく口コミ効果があることなど、メリットは計り知れない。



ただ、口コミはいいことも悪いことも同様に、いや、正確には悪いことほど広がりやすい性格を持っている。アメリカやヨーロッパでも、ブログキャンペーンの失敗は数多く見られる。今回は、アメリカのブロガーの間でいつも最悪のブログキャンペーンとして取り上げられる「Raging Cow」のブログキャンペーンの話をしてみたい。アメリカでまだ多くの企業が企業ブログを始めることに不安がある理由の一つがこの事件にある。



Raging Cowとは、Dr. Pepper/7up Inc.が2003年3月に発売したミルク飲料のこと。もちろん、この名前はRaging Bull(スコセッシの映画のタイトルだが「いきり立つ雄牛」という意味)をCow(雌牛・乳牛)にしたパロディだ。ティーンから20代前半をターゲットとし、チョコレートやピニャコラーダなど5つのフレーバーがあり、コミカルな牛のキャラクターのイラストが入ったプラスチックボトルのパッケージになっている。このキャラクターの牛は、農場を逃げ出し、世の中の退屈なミルク飲料を「ワイルド」にするためミッションに出た、という設定になっている。牛乳というあまり代わり映えのしないマーケットでのティーン向けのブランド戦略としては悪くない設定である。



ティーン、20代前半をターゲットにということで、製品発売時のキャンペーンにはラジオやオンラインリッチメディア、そしてブログが使われた。



ブログキャンペーンでは、この牛のキャラクターを中心にしたブログを開設するとともに、影響力のあるティーンブロガー6人を本社に招待し、製品やプロモーショングッズなどが進呈されたという。そして、彼らのブログでこのRaging Cowのことを書くように依頼し、さらに彼らはRaging Cowとは全く関係がないことにするようにと言い渡されたのである。



6人のブロガー達はそれぞれのブログでRaging Cowのことを書くようになるが、その不自然さが、ブログの商業的な使用を嫌うブログ純粋主義者とでも呼べる人たちにより指摘されるようになる。そして、彼らがDr. Pepper/7upのやり方を批判するコメントやトラックバックを大量にRaging Cowのブログに掲載するようになり、Raging Cowマーケティング側はそれをすべて削除し、終いにはコメント、トラックバックができないようにした。



それが火種となり、今度はRaging Cowブログが、ブログとしていかにひどいデザインと内容であるかということが話題になったり、始めはサイトの著作者が誰だか分からなかったのが急にDr. Pepper/7upが著作者として出てきた、ということに発展してきた。さらに、オンラインマガジンSlateが6人のブロガーの1人にRaging Cowの件でインタビューを求めるメールを送ったところ、Pepper/7upのPRから電話がかかってきて、結局、3者でインタビューを行い、ブロガーも個人の意見ではなくPR担当者のようなそぶりで質問に答えたなどということもあった。これらの様々な批判の記事がブログ界に流れたのである。



そして同時に、あるSEOマーケティング関係者が自らのブログで、Raging Cowの不買運動を始めた。Raging Cow不買バナーとコードを公開し、他のブロガーにブログに貼り付けるように呼びかけ、その不買運動の進展の様子をブログで追いかけた。バナーが張られる数にしたがって、このサイトは検索エンジンで上位に上がり、最終的には「Raging Cow」を検索すると2位になるまでになった。



今では、Raging CowブログもRaging Cow単独のサイト(www.ragingcow.com)も存在していない。Dr. Pepper/7upのサイトには、1ページほどの製品の歴史ページがあるだけだ。ただし、いかにこれがひどいキャンペーンであったかというブロガーたちの意見はRaging Cowと検索するだけでいくらでも見つけられる。逆に、Dr. Pepper/7upの情報を見つけることの方が大変で、Dr. Pepper/7upはこれからもしばらくブログキャンペーンで失敗したブランドとして語られることだろう。



口コミ効果のみを追いかけて、ブロガーと対処することには問題がある。隠し事をせず、消費者と同じ目線で真摯に対応する態度が、ブログやSNS(Social Networking Service)などのCGM(Consumer Generated Media)が普及した環境での企業コミュニケーションに必要とされていることだと思う。




参考情報】

Raging Cow歴史

Raging Cowボイコット


◎過去記事一覧はこちら


著者の略歴】

織田(おりた)浩一 デジタルメディアストラテジーズ社代表、アドイノベーター編集長。 米シアトルを拠点とし、欧米の新広告手法・メディアテクノロジー・IT調査・コンサルティングサービスを提供。2月19日にはオンラインビジネスコミュニティOval Link公開セミナー2005で、25日にはWeb広告研究会フォーラムにて講演を行う予定。詳細は「オーバルリンク」と「Web広告研究会」にて。コメント、質問はemail@adinnovator.com へ。ブログは、http://www.adinnovator.com/


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