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私の本棚:『生命(いのち)のバカ力(ぢから) 人の遺伝子は97%眠っている』 (05/01/20)

2005年01月13日


天才になるための遺伝子の“起こし方”




 生まれつき頭のいい人や早く走れる人がいる。私たちは、それを「遺伝だからしかたがない」と受け入れている。しかし、長年遺伝子を研究してきた著者は、「そうじゃない」、「早く走れたり頭をよくする遺伝子のスイッチをONにすれば、人間の能力はもっと高まる」という。




 精神一到何事かならざらん式の精神主義とは違い、高血圧を起こす酵素「レニン」の遺伝子解読に世界で初めて成功した生命科学者がそういうのだから、説得力が違う。




 人間の体は約60兆の細胞から成っている。細胞には1個ずつの核があり、その中の染色体には「DNA」という化学物質が納まっている。このDNAこそが遺伝子の本体で、両親から受け継いだ遺伝情報がぎっしり書き込まれている。




 1960年代になって、そのDNAは、実は私たちの体を構成するすべてのタンパク質を作るための設計図だということが解明された。つまり人体の手足や心臓といった各部を構成するタンパク質は、両親から遺伝された設計図に基づき、この遺伝子の指示で作られていたのだ。




 同じように、人間の健康や行動を左右するホルモンや酵素といったものも、いつ、どこに、どれだけ作るかといったことは、司令塔である遺伝子が指示しているというのである。




人間の意志が遺伝子の働きを変える!?




 そこで、「生物はすべて遺伝子の意のままに動く“乗り物”にすぎないのでは」という考えもでてくるのだが、著者は逆に「人間の意志が遺伝子の働きを変える」という。




 例えば、著者が筑波大教授時代に1000人以上の人を集めて行なった実験がある。ベテランの漫才師B&Bの漫才を糖尿病患者に聞かせ、「笑いが遺伝子に刺激を与え、血糖値を抑制するタンパク質が多く作られるのではないか」という仮説を実証するためである。




 結果は患者全員の血糖値が大きく低下し、しかもよく笑った人ほど余計に下がるという予想以上の成果がえられた。心の動きが、体にいい結果をもたらす遺伝子のスイッチをONにしたのだ。




 もちろん、心の動きはいい方にも悪い方にも働くはずである。悲しみのあまり、一夜にして髪が真っ白になるといった例は、極度のストレスが老化の遺伝子をONにしたのかも知れない。ではどうすれば、いい方に働く遺伝子のスイッチを入れることができるのか。




 食物の取り方や訓練、あるいは温度、圧力などいろいろな要因があるが、著者は自分の体験も踏まえて、人の思いや心の持ち方が大きいと強調する。同じことをやっても、楽しんでやったときと、嫌々やったときでは疲れ方が違う。それなら、面白いこと、楽しいことを意識的にやれば、好ましい遺伝子がONになるのではないか、というのである。




天才と凡才の差は遺伝子の目覚めにある




 人間は1人ずつ違った存在として生きているが、実は持っている遺伝子暗号は99.9%が同じだといわれる。ところが私たちはその遺伝子の情報の97%を使っていないのだという。つまり私たちは、みんな天才やスポーツ万能選手とほとんど変わらない遺伝子の持ち主なのに、それを眠らせているだけかも知れないのである。




 遺伝子に書かれていないことは誰にもできないが、書かれていることならその遺伝子のスイッチを入れて活動させればいい。天才と凡才の差は、遺伝子の差ではなく遺伝子の目覚めの差だったのだ。この本がその遺伝子の起こし方を教えてくれる。



(松田 博市)



書名:生命(いのち)のバカ力(ぢから) 人の遺伝子は97%眠っている
著者:村上 和雄
出版:講談社
税込価格:¥924(本体:¥880)
サイズ:新書判/233ページ
ISBN:4-06-272203-8
発行年月:2003年7月











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