実はライブドア“創業者”、iPod mini仕掛け人のアップル前刀氏
米アップルコンピュータの携帯音楽プレーヤー「iPod mini(アイポッドミニ)」は2004年の大ヒット商品だ。このヒットを仕掛けたのが、同社日本法人代表の前刀禎明氏(46歳)だ。
大ヒットの陰には前刀氏が主導した独特のマーケティングがあった。従来の携帯音楽プレーヤーは鞄に入れておくものであり、外見を気にする人は少なかった。前刀氏はあえてアイポッドミニを「見せて歩く機器」と位置づけて、ファッションの一部であることをアピールした。この試みで、最先端のデジタル機器にあまり関心を示さない若い女性などの支持を集めるのに成功した。
日本のサイトに世界が追随
その一例が前刀氏のアイデアによるウェブサイト「iPod.com」だ。銀や青など5色あるアイポッドミニそれぞれについて服装とのコーディネート例を紹介した。米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)がサイトを高く評価し、全世界で展開することになった。
大ヒットの立役者である前刀氏だが、アップルでの社歴は浅い。2004年3月中旬にジョブズCEOと面談して4月に入社した。米アップルは東京・銀座に直営店「アップルストア」をオープンするなど、本社が日本市場に直接関与する姿勢を打ち出していた。米国の意向を理解しながら、日本流のマーケティングができる人物として白羽の矢が立ったのが前刀氏だった。
「アップルが日本での体制を一新して、アイポッドミニで新しい音楽の楽しみ方を提案しようとしているところにやりがいを感じた」と前刀氏は入社した動機を語る。当初は日本のマーケティングを担当する米アップルバイスプレジデントだったが、今年10月からは日本法人代表も兼務した。
独特のマーケティングでヒットを生むやり方はアップルに入社する前にも実績がある。実は前刀氏は、プロ野球参入表明で一躍有名になったライブドアの“創業者”という経歴を持つ。慶応義塾大学大学院を修了後、ソニーやウォルト・ディズニー・ジャパンなどを経て、1999年8月に起業した。それが、無料インターネット接続サービスを手がけるライブドアだった。
当時、インターネットは接続設定や料金体系が難解で、多くの人にとって敷居が高かった。そこで、無料をキーワードにタレントを使った派手な広告宣伝を展開することでインターネットへの敷居を低くした。サービス開始後、1年半で会員数は100万人を突破。十数社あった無料インターネット接続業者では抜きんでた存在になった。
しかし、事業が軌道に乗らないうちに、融資を受けていた米ベンチャーキャピタルに出資していた米ワールドコムが破綻。これを受けて前刀氏は2002年10月に事業を断念した。
「インターネット事業の会員に迷惑をかけないために堀江貴文氏のところへ営業譲渡を決めてから、民事再生法を申請した。しかし、まさか堀江氏の会社がライブドアに社名を変更するとは思わなかった」と前刀氏は苦笑する。前刀氏が築いたライブドアの知名度は、堀江社長にとって大きな魅力に映ったようだ。
音楽配信の準備を進める
インターネット接続サービスとアイポッドミニ――。全く別物のように思えるが、前刀氏は「最先端の技術を使いやすい形にしてユーザーに提供することにより新しくて楽しいライフスタイルブランドを作る点で共通している」と話す。
アイポッドミニをブームで終わらせるのではなく、いかに定着させるかが前刀氏の課題となる。その試金石となるのが、アップルが米国で展開しているアイポッドに楽曲をダウンロードできる有料音楽配信サービスの実施だ。ソニーなどのライバルを突き放すために、一刻も早く日本でもサービスを開始したいところ。詳細について前刀氏は明かさないが、「話は進んでいる。請うご期待」と自信ありげだ。(戸田 顕司)
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