詳報:ヤフーBBで新たな顧客情報流出発覚、広範囲に流通も
今年2月に顧客情報流出事件が発覚したソフトバンクBB(東京都中央区)から新たな顧客情報が流出していることが、日経ビジネス誌の取材を契機に明らかになった。2月に発覚した約660万件の顧客情報と、6月に発覚した最大約9万件の電話サービスの通話情報とは別の種類のもので、最大8万6000件の顧客情報が流出していると見られる。
事件は終わっていなかった
本誌は11月中旬、ADSL(非対称デジタル加入者線)サービス「ヤフーBB」の顧客情報だとする900人分の個人情報をテキストファイルの形式で入手した。この個人情報をソフトバンクに提示し、24日に確認を求めた。
同社は29日、本誌に対して「昔のデータを引っ張り出して照合するのに予想以上の手間がかかり、確認作業が難航している」として回答を避けていたが、翌日午後、「2003年3月11日から22日時点までの顧客情報と一致することが判明した」と発表した。
本誌が入手した個人情報には、氏名、住所、電話番号に加えて、携帯電話番号が載っている。先に流出が確認されている顧客情報には携帯電話の項目がないため、新たな種類の顧客情報が流出していることになる。
本誌に対する情報提供者は「ヤフーBBの顧客情報のサンプルとして名簿業者などに出回っているものを手に入れた。自分は数万件分を持っている」と話す。
流出の時期や詳しい経路は不明だが、ソフトバンクによると、「手口を見ると2月の事件と似ているため、その事件に関与した関係者がテスト目的で入手した可能性がある。何らかのマーケティングに使用する狙いで、ある部門のサーバーに移してあった顧客情報が抜き取られたのではないか」(田部康喜広報室長)としている。
一方でソフトバンクは、「今回の個人情報には、ヤフーIDやメールアドレスといった、ヤフーBB固有の情報がないため、当社のものであると断定はできない。申し込み段階の顧客情報が代理店から流出した可能性もある」(田部室長)と含みを残している。
しかし出元がどこであれ、ヤフーBBの顧客情報と一致したことは事実だ。ソフトバンクはこれまで、「犯人は逮捕され、データは押収もしくは破棄された。2次流出の可能性は極めて低い」とし、事実上、流出事件は終わったと見ていたが、今回の新たな流出の発覚で、事件は今もなお尾を引いていることが証明された格好だ。
しかも本誌に持ち込まれた経緯を見ると、複数の人間の間に出回っていることも分かる。顧客情報が2月の事件の関係者の手から離れ、広範囲に流通している可能性も考えられる。
民事訴訟の流れに影響も
今年5月、関西に住む顧客3人が、「精神的な苦痛を受けた」として、ソフトバンクBBなどを相手取り、1人10万円の慰謝料を求める民事訴訟を大阪地方裁判所に起こしている。別の三十数人のグループも訴訟の準備に入っており、今回の流出発覚は、こうした裁判の流れにも影響を与えかねない。
実は、2月の事件の関係者の中で、約660万件の顧客情報を抜き出し、元政治結社代表の森洋被告らに渡した冨安泰生被告の協力者だけが唯一逮捕されていない。この協力者は冨安被告のハッカー仲間で、ソフトバンクBBの業務委託を受け、顧客データベースにアクセスできる権限を持っていた。冨安被告の前でデータベースへのアクセスを実演した際、冨安被告がその手法を盗み見たことが2月の流出騒動につながった。
ある情報通信業界の関係者は、この協力者も「ヤフーBBの顧客情報を保有している」と指摘する。今回、本誌が入手した個人情報と協力者との関連性は不明だが、ソフトバンクにとって不気味な存在であることは間違いない。 (井上 理)
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