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Webマーケティングの近未来 第11回〜欧米での企業ブログの現状(その4)

2004年10月25日

前回、前々回と企業のPR、プロモーションとしてのブログのコンサルティングを行っている専門家へのインタビューを行った。このインタビューシリーズはこれからも続けていくつもりではあるが、今回はちょっと趣向を変えて、ブログメディア企業を見てみたい。



ブログメディア会社



ブログがメディアであることは当たり前の話で、日経BPをはじめ、CNET、NYタイムス紙など多数のメディア企業がブログを使っている。ただ、彼らはブログを自社のサイトの一部として使っているだけなので、ブログメディア企業とは呼びにくい。



インターネットが普及し始めたころに、Yahoo!やLycosなどのオンラインメディアが生まれてきたように、アメリカではブログのみを複数出版するメディア会社が出てきている。このようなメディア会社が出てくるということで、メディアとしてのブログの層の厚さや、進化の先が見えてくるのではないかと思う。そのブログ出版社から、代表的な会社である「Gawker Media」と「Weblogs Inc.」(次回の予定)について書いてみたいと思う。



Gawker Media



Nick Denton氏が率いるGawker Mediaは、NYベースのブログ出版社で、現在8つのブログとブログポータルを運営している。Denton氏は、イギリスの出身で、元ファイナンシャルタイムスなどでジャーナリストとして働いていた。シリコンバレーでIT業界を追いかけ始めたころから起業への熱が芽生え、何人かのパートナーとMoreoverというニュースアグリゲーションサービスを始めた。



だが、それとは別に、たまたま起業家と投資家の橋渡しをする機会を彼とパートナーが持ったため、それが後に世界80都市で行われるFirst Tuesdayというネットワーキングイベントのビジネスに成長した。そして、ネットバブル最高潮のころ、彼らはこのビジネスをイスラエルの会社へ売り、5000万ドル相当の株と現金を手にする。



その後、Denton氏はNYに移り、新しいメディア事業を考え始める。既存のオンラインメディアはあまりにも退屈ということから、ブログの可能性を考える。すでに個人レベルではブログが普及しつつあり、誰も編集したり、検閲することがないことから、大胆な意見が多いことがわかっていた。Denton氏は、ブログ読者の中心層であるネット・メディア慣れした若い男性層に合わせて企画を立ち上げた。



2002年8月にまずガジェット(PC/家電機器)のブログ「Gizmodo」を立ち上げ、同年12月にNYメディア業界ゴシップブログ「Gawker」、2003年11月に知的ポルノブログ「Fleshbot」、2004年1月にワシントンの政治ゴシップブログ「Wonkett」、5月にハリウッドゴシップブログ「Defamer」と次々と立ち上げていった。この10月には、カー情報ブログ「Jalopnik」、ゲームオタクのための「Kotaku」、面白いオンラインコンテンツを追いかける「Screenhead」の3つのブログをまとめて公開した。



この合間にも、ブログ広告キャンペーンとしてはおそらく初めてといえるショートフィルムとブログを組み合わせたNikeの「Art of Speed」(6月に20日間行われたキャンペーンで既に終了)を展開し、ブログポータルサービス「Kinja」を立ち上げている。



Gawkerのビジネスモデルは。ITバブル崩壊後のモデルとも言える徹底的なローコスト経営である。Gawkerは、基本的にオフィスはなく正社員もいない。各ブログの担当編集者は、Denton氏が様々なブログを読んでその書き手をスカウトした人たちだ。契約社員で月に1500ドルから2000ドルぐらいの給料でスタートし、1人でそのブログのコンテンツを運営するかわりに、ブログコンテンツの編集権は編集者が握るという表現の自由度が保障されている。



ただ、この給料の安さから、初代のGizmodoやGawkerの編集者は、すでに競合や他のメディア会社に移っている。また、基本的に他のメディアの情報についての解説やコメントを載せているだけなので、情報料もタダである。



Denton氏はインタビューで「GoogleのAdSenseのお陰で、広告セールスの部署をつくることなく、ブログ出版の費用をかなりカバーできるので、他のオンラインメディア事業に比べると始めやすい」と答えている。



米ビジネス誌のBusiness 2.0の調べによると、今年6月の時点で(前述の3つのブログが立ち上がる前)、各ブログはすでに3000から6000ドルの収入を毎月上げている。メディア会社として考えると大きな規模ではないが、それ以降のトラフィックも増えているであろうし、ブログの数も増えていることから、このビジネスモデルを続けていける限り収益は増えていくように思える。



また、このようなブログのネットワークでは相互にプロモーションすることができるので、Nikeのようにカスタムブログを立ち上げる場合でも、トラフィックを簡単に誘導できるというメリットもある。



実際、新たに立ち上げたカー情報ブログJalopnikでは、Audiが専属スポンサーとして付いている。「NikeやAudiのような勇敢な広告主は、このブログというメディアを、オンライン広告やクリック保障型広告のメディアという風ではなく、ブランディングのメディアとして考えている」とDenton氏はまとめている。



次回は、Weblogs, Incについて解説する。




参考情報】

Gawker Media

 (各ブログへのリンクはこのサイトにあります)

Business 2.0: What Makes Nick Tick ?

 (購読が必要)



◎過去記事一覧はこちら



著者の略歴】

織田(おりた)浩一 デジタルメディアストラテジーズ社代表、アドイノベーター編集長。 米シアトルを拠点とし、欧米の新広告手法・メディアテクノロジー・IT調査・コンサルティングサービスを提供。今回取り上げたGawkerとNikeのArt of Speedブログキャンペーンについてはケーススタディレポートを作成の予定。ご希望の方、コメント、質問はemail@adinnovator.com へ。ブログは、http://www.adinnovator.com/


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