「次世代では絶対負けない」、米MSがゲーム事業にかける本気
「次世代ゲーム機では絶対に負けないし、負けるつもりはない」――。
こう意気込むのは、ゲーム機で世界的に圧倒的な優位を誇る「プレイステーション2(PS2)」のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)関係者ではない。その背中を遠目に見ながら「Xbox(エックスボックス)」で追う、米マイクロソフトのコーポレートバイスプレジデント、ピーター・ムーア氏だ。
Xboxのシェアは、日本市場で数%にすぎない。それだけで判断すると、冒頭の発言は虚勢を張っているだけと受け取られかねない。競合するSCEや任天堂は、性能を高めた次世代機を2005年末から2006年にかけて投入すると見られ、そう簡単に苦境を脱せないようにも映る。
失敗で得た教訓を生かす
ただし、北米や欧州市場に目を向けると、この1年でXboxは急速に存在感を増している。北米で2003年6月に23%だったシェアは、今年6月に33%まで上昇。欧州でも同様の伸びを示す。いずれも本体価格の段階的な値下げや、人気ソフトの投入が奏功した。北米で約50%を占めるPS2の優位は揺るがないが、ムーア氏は「勢いを増していることが、次世代機の投入に向けて大きな意味を持つ」と話す。
自信を強めているのは、こうした動向だけが理由ではない。失敗を糧に、着々と次世代機の戦略を立てているからだ。
ムーア氏は日本市場で大敗を喫した原因について、主に3つの理由を挙げる。まず、本体がビデオデッキのように大きく、デザインが日本人に受けなかった。ゲームソフトの数を十分に揃えられず、消費者の目も引きつけられなかった。決定的だったのは、日本への参入がPS2に2年遅れの2002年になってしまったことだ。
「同じ失敗を次は繰り返さない」と、ムーア氏は言う。次世代機では、これらを教訓にデザインを一新、本体は小型でシンプルな外観にする。ソフトの数も最初から充実させ、日本人の好みに合ったタイトルも揃える。次世代機に応用できるゲーム開発支援ソフトは、ゲーム会社に提供済みだ。
現行機が値下げでシェアを伸ばしたため、価格競争力も重視。現行機と同じくDVDドライブを採用する見込みで、ハードディスクドライブは標準装備しない可能性が高い。次世代DVD規格の1つであるブルーレイ・ディスクの搭載を打ち出したPS2次世代機より、価格は相当に安くなるはずだ。
ブルーレイを採用するPS2の次世代機では、ゲームは映画や音楽といったコンテンツの1つとして扱われる傾向が強まる。SCEの久多良木健社長は、「ゲームや映画などの融合が進めば、記憶容量が大きいブルーレイの採用が重要になる」と見る。
これに対してマイクロソフトは、「あくまでゲーム機として投入することにこだわる」(ムーア氏)。例えば、オンラインゲーム機能は今まで以上に強化する。現行機と同様に、最初からブロードバンド(高速大容量)通信によるオンラインゲームに対応させる。ユーザー間で音声通話ができるなど、定評がある機能や使いやすさは、次世代に受け継いでいく。
次世代機の投入時期について、ムーア氏は「ライバルに遅れることは決してない」と明言する。もちろん、ライバルとはPS2を指し、投入時期は2005年末を視野に入れている。お膝元の北米で先行して勢いをつけ、日本や欧州などに攻め込んでいく――。描いているのは、こんなストーリーだ。
「ゲーム事業の勝敗は1世代で決まらない。他社が新しい動きを見せれば受けて立つ」とムーア氏は誓う。各社の次世代機の姿はおぼろげにしか見えておらず、まだ優劣を語るべきではない。しかし、パソコンで覇権を握ったマイクロソフトが、ゲーム業界も制していこうという強い意志を持っていることは間違いなさそうだ。(瀧本 大輔)
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