新社長を直撃! センチュリー証券 その1〜大株主の熱意を意気に感じて証券界に復帰
野澤 正平(のざわ・しょうへい)氏/センチュリー証券 社長
(聞き手:大河原 克行=フリーライター、森 永輔=nikkeibp.jp編集)
センチュリー証券の新社長に、山一證券最後の社長、野澤正平氏が就任した。涙の会見から約7年。「証券界への復帰はまったく考えていなかった」という野澤氏が、一転、証券界へ復帰した。その背景には何があったのか、そして、これから何をやろうとしているのか。山一證券最後の社長として背負う十字架も重くのしかかかる。野澤社長に、山一證券破綻からセンチュリー証券社長に至るまで、そして今後の展望をじっくり語ってもらった。
−−なぜセンチュリー証券の社長に就任されたのですか。
野澤 実は、山一證券を辞めた後、私は証券界に戻ってくるつもりはまったくありませんでした。むしろ、二度とここには戻りたくない、という気持ちの方が強かったですね。

野澤 正平 氏/センチュリー証券 社長
それに、周りの反対が強かった。特に、うちの家内は今でも反対している(笑)。「あのときの苦しみを忘れたのか」とか、「もう年金だけでも食べられるでしょう」とか言う。私が「いや年金だけでは食えない」と反論すると、「橋の下だって暮らせるでしょう」と極論をいう。
だから、今年4月に特別顧問としてセンチュリー証券にお世話になると決めたときも家内には何も言わなかったんですよ。ただ薄々感じていたようで、朝、見送るときに皮肉を言うんです。「おとうさん、今日はどこに行くんですか」ときつい口調で(笑)。「どこに行こうかなぁ」ととぼけるんですが、実は、ちゃんと分かっているんですよね。
ただ、その一方で、第三者の立場として証券界に対する関心があったのは事実です。かつての仲間(部下)が他の証券会社で頑張っていますし、マーケットがよくならないと、彼らが生きない。だから、なんとかマーケットがよいなってほしいとは思っていた。その点では、気になっていましたよ。
では、なぜ、それほどまでに戻りたくないと思っていた証券界に戻ってきたのか。一言で言えば、大株主で、商品先物取引を手掛けている日本ユニコムの二家勝明会長の、センチュリー証券に対する熱い想いに負けたという点に尽きます。
証券をやってきた人間からすれば、商品先物取引はまったく分からない世界です。正直なところ、最初は「嫌だなぁ」と思いましたよ。しかし、2カ月掛けて、二家会長といろいろと話をしたんです。その話し合いのなかで、私の考えと二家会長の考えが、一緒だと感じる部分がいくつもあった。

お引き受けするに当たっては、いくつかのお約束をさせていただいた。一つは、向こう(商品先物取引)の営業担当者に、センチュリー証券のお客様に対して絶対にアプローチさせないということです。それをやると、証券のお客様が逃げていくことになる。もう一つ、「経営には口出しをしないでほしい」ということもお願いしました。
−−二家会長からは、どんなことを言われたのですか。
野澤 「頼む」と言われた。そして、「ぜひ、ひと肌も、ふた肌も脱いでほしい」と。その言葉の裏には、いろいろな意味があると思います。それは2カ月間の話し合いのなかでヒシヒシと伝わってきた。それと、二家会長は、「野澤さん、ここは小さくても総合証券会社ですからね」と言いました。そうなんですよ。総合証券としての基盤をしっかりとつくり上げたいと思っています。
雇われた以上は、センチュリー証券をなんとか大きくしたい、名が通るようにしたいと思っています。私自身もなるべく外に出て、センチュリー証券を露出させたい。多くの人にお目にかかりたいと思っていますよ。ただ、マスコミは大っ嫌いなんですけどね(笑)。
日本ユニコムを取り巻く環境が変化している。今年末には商品先物取引の委託手数料の完全自由化を控え、今後の競争が激化すると予想されている。加えて、電話で勧誘して顧客に販売する不招清勧売が、米国同様、日本でも禁止になるという動きもある。
そうしたなか、日本ユニコムはセンチュリー証券を2004年1月に買収した。センチュリー証券の買収は、証券取次業へと本格進出することで経営の多角化を図ることが狙いだ受け取れる。そして、証券進出への本気ぶりを裏づけるのが野澤氏の社長招へいだと言える。証券界に戻ることを考えていなかった野澤氏の社長就任によって、センチュリー証券は証券界でも台風の目となりつつある。
−−今年4月からは特別顧問、そして6月から社長に就任。社内の雰囲気はどうですか。
野澤 元気な社員が多いですよ。今年4月から特別顧問として出社しているのですが、ちょうどそのタイミングで本社を移転しました。新本社に出社しましたら、もう新社長室が出来上がっていたんです。三つ並んでいる部屋の真ん中かなと思って、荷物をほどいていたら、二家会長が「こっちの部屋だよ」といちばん奥の部屋を用意していただいた。真ん中の部屋は私が使う応接室だったらしいです(笑)。

−−山一の社長室に比べると広さはどうですか。
野澤 広さは山一の社長室の5分の1程度です。しかし、明るくて、とても落ち着く部屋で、私は気に入っていますよ。
−−センチュリー証券での社長が、最後の仕事だと思っていますか。
野澤 うーん、66歳ですし、もう歳ですからね(笑)。それに、いつクビになるかは分かりませんし(笑)。10年も社長をやるなんて無理ですから、その限られた期間のなかで、センチュリー証券を大きくする基盤をつくることが役目だと思っています。
クビになるまではエンジン全開ですね。そのくらい、二家会長の熱い思いに打たれている。なんとしてでも、強い会社にして、社員にとっても、投資家にとっても、元気を与えられる楽しい会社でありたいと思っています。
−−証券界に戻ってどんなことをやりたいですか。
野澤 日本の景気をなんとか明るくしたい。そして、証券界に活気を取り戻したい。懇親会やパーティーに参加すると、代議士の方などが景気が悪いのは証券会社のせいだという。しかし、そのとき、私はこういうんですよ。「あなた方は証券市場をよくしようと思ったことはありますか」と。笑い話に聞こるかもしれないが、これは簡単な話で、買いが多くて、売りが少なければ株式市場はよくなる。
例えば、日本には1450兆円の個人金融資産がある。この一部でいいから、証券市場に参加していただけないか。1回に1万円ずつならば、そんなに難しい話ではないでしょう。同じファンドに、毎月同じ日に1万円だけ投資していただく。そうすれば、年間で12万円。これを3年、4年とやってもらうことで、間接的に市場に参加してもらう。
それには、税制面での優遇措置も必要です。100万円買ったら、2万円の還付があるというのもいいでしょう。証券市場が活気づけば自然と景気も上昇しますよ。
山一證券の廃業から早くも7年が経過しようとしている。「新社長としての船出ですから、あのときの写真は使わないでくださいね」と野澤社長は話す。だが、あの涙の会見は、いまだに強烈な印象として多くの人たちの脳裏に残っている。いや、野澤社長自身が、あの会見をいちばん忘れていない。「忘れようと思ったことは一度もない」とも言えるだろう。次回、野澤社長に、あえて山一證券社長時代を振り返っていただく。
次回は、9月1日(水)に掲載する予定です。
■野澤 正平 氏のプロフィール
学歴】
1964年 3月 法政大学 経済学部 卒業
職歴】
1964年 4月 山一證券株式会社入社
1990年 6月 取締役金融法人本部副本部長
1994年 4月 常務取締役名古屋支店長
1996年 4月 専務取締役名古屋支店長
1997年 8月 代表取締役社長就任
2000年 3月 シリコンコンテンツ入社 会長
2003年 4月 大木建設株式会社入社 特別顧問
2004年 4月 センチュリー証券入社 特別顧問
2004年 6月 センチュリー証券 社長
■関連記事
・センチュリー証券 その1〜大株主の熱意を意気に感じて証券界に復帰
・センチュリー証券 その2〜山一證券の十字架を背負い続ける
・センチュリー証券 その3〜社員は会社があるから働ける
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