ほどよく飲めば心臓病を予防する
適度な飲酒は、心臓の健康に良い影響をもたらすことが、大規模な臨床研究で次々と明らかになってきた。
赤ワインの心臓病予防効果については、すでによく知られている。赤ワインが動脈硬化や心臓病を起こりにくくする仕組みの解明も進んでいる。しかし、米国エモリー大学医学部のグループの研究によれば、赤ワインに限らずビールやリキュールでも、酒の種類にかかわらず、酒を飲む人ほど心不全の発症率や死亡率が低下しており、アルコールそのものが心不全を起こりにくくしている可能性が高いと結論づけている。
エモリー大のグループは、高齢の男女(平均年齢73.3歳)2235人を最長14年にわたって追跡調査して飲酒量と心不全の発症率の関係を調べた。その結果、心不全を起こす危険度は、全く酒を飲まない人に比べて、毎日酒を1〜1.5杯程度(1杯は缶ビールで1本、ワインでグラス1杯、リキュールで1ショット、日本酒で約0.5合に相当)飲む人では29%、同1.5〜4杯程度飲む人では53%も低かった。
一方、米国がん学会の研究結果では、飲酒量の多少にかかわらず、心筋梗塞などの虚血性心疾患を発病するリスクは、飲まない人より飲む人の方が低かった。お酒を少量飲む人は、がんや脳血管障害を含めた全体の死亡率も低い。特に、1日にアルコールを10〜15ミリリットル(ワイン1杯あるいは缶ビール1本に相当)程度を飲む人で、死亡率は最も低かった。ただし大量飲酒者では、逆に飲まない人よりも全体の死亡率は高くなっていた。
酒が虚血性心疾患を予防する理由の1つとして、アルコールには、いわゆる“善玉コレステロール”と呼ばれるHDLコレステロールを増やす作用があることが挙げられる。さらに、アルコールには血液を固まりにくくする働きもある。
心臓病の予防の観点から見れば、少量のアルコールは体に良いということになる。
さらに、米国の男性5万人を対象とした研究では、酒を飲まない人よりも飲酒量の比較的多い人のほうが糖尿病になりにくいという結果も報告されている。また、別の研究では、糖尿病と診断された30歳以上の男性2419人を10年間追跡した結果、酒の種類にかかわらず、酒を毎日0.5〜2杯飲む人は酒を飲まない人に比べて心臓病になる危険度が36%、それ以上飲む人では41%も低かったという報告もある。
しかし、がんと飲酒の関係については、少量でもリスクが増すことが確かめられている。特に口腔がん、食道がん、肝臓がんでは確実にリスクが高まり、喉頭がん、大腸がん、乳がん、肺がんでもリスクが高まるとされる。がん予防の観点からは、飲酒は勧められないということになる。
ちなみに、日本の健康づくりの指針である「健康日本21」では、「1日1合」が適正飲酒量として推奨されている。これは、日本人の総死亡率と飲酒量の関係を調べたところ、1日1合程度の酒を飲む人の死亡率が最低だったという研究結果による。
いずれにしろ、酒はほどほどに、というのが結論のようだ。
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