東大先端研とsantec、広帯域で高出力の光源を製品化
東京大学先端科学技術研究センターの多久島裕一助教授とsantec(愛知県小牧市)は共同で、出力波長の帯域が約1.2〜2.1マイクロ(1マイクロは1000分の1mm)と広く、しかも従来のLED(発光ダイオード)光源より10〜100倍の高出力が得られる光源を製品化した。光通信用デバイスの開発や製造における評価や検査などに使えるほか、医療機器への応用も期待される。多久島助教授が開発した二つの技術を使い、レーザーの安定化技術と小型化低価格化のための最適設計を光通信部品や光源、計測機器の開発製造が専業のsantecが行うことで、共同開発の開始から3カ月で製品化できた。
同光源は、帯域が広い白色光源と帯域が狭いレーザー光の中間の性質を持つ。電灯などの白色光源は、可視光領域を含む紫外線から赤外線の波長0.3〜2.1マイクロと非常に広帯域の波長成分を含むが、出力が低く、また集光性が悪い。逆にレーザー光は特定の波長で発振するため帯域が狭いが出力が高く、集光性に優れている。光通信など特定の用途向けにはレーザー光の性質は望ましいが、計測機器用光源など、広帯域の光が必要な用途では適切な光源がこれまでなく、複数のLED光源を組み合わせたり、ASE(光増幅自然放出)光源を利用していた。
今回開発された広帯域光源は、光通信で重要な波長1.3〜1.5マイクロをカバーする帯域幅約1マイクロ(1000nm、1nmは10のマイナス9乗メートル)でほぼフラットな出力特性を持つのが特徴。幹線系以外にFTTH(Fiber to the Home)と呼ばれる光アクセスネットワーク向けの光通信部品などの開発・製造工程を効率化することにより部品の低価格化が期待される。
同光源は、ループ状に配置した複数種類の光ファイバーに単色レーザー光を導いて発振させる「擬似モード同期ファイバーレーザー」という技術と、この出力光を非線形性の強い特殊な光ファイバーの中を通すことで帯域を広げる「スーパーコンティニューム発生技術」を組み合わせている。「擬似モード同期ファイバーレーザー」には、希土類元素エルビウムを添加した光ファイバーを組み込んである。これは、古河電工と約2年間の共同開発を進めてきたもの。同レーザー技術について両者は2004年3月に共同で基本特許1件を出願している。また「スーパーコンティニューム発生技術」で用いる高非線形光ファイバーは、住友電工が光スイッチなどへの応用を目指して開発を進めている製品を使用した。
同光源の技術開発を多久島助教授が行ったことを知ったsantecは、自社の製品開発、製造・検査部門で広帯域光源を求めていることや、医療分野でのニーズへの対応を提案し、製品化への共同開発を2004年初めに開始した。同社の実装技術や製品化技術を生かし、3カ月で幅443×高さ132×奥行き400mmのボックス型で製品化した。性能を実現するには複数のパラメーターの調整が必要だが、多久島助教授の設計通りに試作したところ「1回の試作でほぼ目的の性能の製品が実現できた」(santec研究開発部第一開発グループの上原昇グループ長)という。その後、「スーパーコンティニューム発生技術」に関わる光ファイバー長の最適化を同社が行い、当初の設計の約1/10の約100mにすることでさらにフラットな特性が得られることが分かり、小型化と製品の低コスト化も実現している。両者は2004年3月に共同で基本特許1件を出願している。
同光源装置は、2004年9月に出荷を開始し、2005年から米国を中心に世界で年間100台前後を販売する予定。価格は600万〜700万円。光通信機器の研究開発を行う大学や企業の研究機関に向けて販売されるほか、OCT(光コヒーレントトモグラフィー)と呼ばれる網膜や皮膚の内部組織の断層撮影が可能なメディカル診断装置において分解能2マイクロ以下と現在の光源の10倍以上の分解能が得られることから、メディカル分野への応用も期待されるという。
同光源の技術開発については、2004年5月16〜21日に米サンフランシスコで開催される「2004 Conference on Lasers and Electro-Optics /International Quantum Electronics Conference(CLEO/QELS 2004)」で多久島助教授が学術発表するとともに、併設の展示会場のsantecブースで製品を展示する予定。(大西 順雄=日経BPクリエーティブ編集委員)
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