若者の心をとらえ、急成長する中古着物ビジネス
2004年3月18日
ブームの火付け役と目されるのは、着物製造卸の東京山喜(東京都中央区)が運営する中古着物店「たんす屋」だ。1999年から展開を始め、現在の店舗数は約70に上る。扱う商品の中心価格帯は正絹の着物で1万5000円程度。思い切った低価格で、これまで着物と縁の薄かった若年層の需要を取り込んでいる。2004年5月期の中古着物事業の売上高は約25億円、経常利益は1億円強を見込む。
たんす屋では、店への持ち込みと訪問による買い取りで商品を仕入れる。仕入れた商品はすべて提携工場で丸洗いし、抗菌防臭加工、検針、プレスを施したうえで、店に出す。古着特有の防虫剤やカビのにおいを取り除き、品質を向上させることで、高い人気を維持している。品質向上にお金をかける一方で、新規出店はいわゆる「居抜き」を中心にするなど、店の運営では徹底したローコスト化を進めてきた。
●「昭和ブーム」を取り込む
東京山喜は中古着物事業をさらに拡大するため、今年1月、東京・代官山に「きものOld&Newたんす屋」を出店した。同店では、若者の間に広がっている「昭和ブーム」に合わせて、当時人気を博した織物「銘仙」を品揃えの中心に据えた。さらに、現代の若者の体形に合わせた新品も豊富に取り揃え、洋服と同じようにハンガーに吊るして販売する。これら工夫によって、同店の顧客は25〜35歳の女性が全体の8割を占めるまでになったという。
東京山喜は今後、たんす屋の新規出店を年間20店のペースで進める計画。中村健一社長は「様々な分野で国際化が進む中、若い人の間で日本独自の着物文化を見直す風潮が強まっている。中古着物の潜在需要は大きい」と話す。
中古着物事業に力を入れているのは、東京山喜だけではない。京都市の呉服販売会社、新装大橋も1992年から中古着物店「ながもち屋」の本格展開を始め、店舗数を47に拡大した。
ながもち屋は、中古着物を持ち主から預かり、売れた時に代金の5割を店側が受け取る委託販売方式を取る。販売価格は持ち主と相談して決め、着物は基本的に預かった店舗のみで販売する。「安く仕入れて、高く売るのでは」という消費者の不安を解消し、質の高い中古着物を確保している。
中古品は一点物ばかりで、店に並ぶ商品の入れ替わりが激しいため、品物を見に来る顧客の来店頻度が高い。そこで、新装大橋は同じ商業施設の中に、ながもち屋と新品の販売店を併せて出店し、「着物は中古、帯は新品」といった需要を掘り起こして、トータルの売り上げを伸ばしている。
●低迷脱出の起爆剤に
中古市場とは対照的に、新品の着物市場は81年の1兆8000億円をピークに縮小を続け、現在は6000億円程度にまで落ち込んでいる。新装大橋の大橋英士社長は低迷の原因を「隣近所で着物を交換する私的流通がなくなり、家庭内で着物が“邪魔者”になるケースが増えた。そして、着物店が手っ取り早く売り上げを稼ぐため、高級品の販売ばかりに力を入れたことが、需要減退に拍車をかけた」と説明するが、業界が危機的状況にあるのは確かだ。
そうした中で、中古着物の人気上昇は唯一の「希望の光」とも言える。それだけに中古ビジネスに寄せる業界関係者の期待は、今後も日に日に高まっていきそうだ。(吉岡 陽)
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