サービス大国への道(第2回)〜外資系五ツ星ホテルvs帝国ホテル
2003年12月3日
帝国ホテル、威信かけた大改修に乗り出す
日本を代表する名門ホテルはどこか? そう問われれば、大半の人は「帝国ホテル」と答えるだろう。
その帝国ホテルは、今から110年以上も前の明治23年(1890年)、時の外務大臣で欧化政策を推し進めた井上馨がホテル建設を提唱したことによって誕生した。開業するや否や、帝国ホテルは、国賓を遇する「日本の迎賓館」として、また貴族や実業家の社交の場として不動の地位を築いた。文字どおり日本の国策に沿ったホテルである。宮内省が筆頭株主という開業時の株主構成がこのことをはっきりと物語っている。
戦後、帝国ホテルは株買占めによる覇権争いや、ホテルオークラ(1962年開業)との競合、ライト館の解体など紆余曲折を経ながらも、日本のホテル業界においてトップの座を守り続けてきた。
しかし、前回、報道したように、「2007年問題」を通じて、五ツ星クラスの外資系高級ホテルが都心で相次いで開業する。迎え撃つ格好の帝国ホテルは、サービス面では外資系ホテルをしのぐものの、ハード面では必ずしも優勢に立っているとは言えない。そんな中、帝国ホテルは2003年12月から5年間をかけて、本館の大改修に乗り出す。投資額は約170億円に上る見込みだ。1世紀を超える歴史を誇る名門ホテルの威信をかけた動きといえる。
外資系ホテルをにらんだ大改修に
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| ・帝国ホテルは2003年12月から5年かけて、本館(手前)の大改修を実施する。投資額は約170億円の見込み。外資系超高級ホテルの出店をにらみながらのリニューアルとなる |
しかし、単に大規模な改修を行うだけでは、もちろんない。「五ツ星クラスの外資系ホテルがオープンする状況や、その内容をにらみながら改修を進める」(山中次長)。
今後、都心では2005年にコンラッド(汐留)、2006年にマンダリン・オリエンタル(日本橋)、2007年にザ・ペニンシュラ(丸の内)、2008年にザ・リッツ・カールトン(六本木)といった外資系の超高級ホテルがオープンする予定だ。
「2007年問題」というと客室を巡るし烈な競争に眼が向かいがちだが、実はそれだけではない。たとえば、今年4月にオープンしたグランドハイアット東京(六本木)は、13の宴会場と10の料飲施設を持つ。厚みのあるラインアップである。
今後オープンを予定している外資系ホテルのうち、宴会部門にも力を入れると見られているのは、ペニンシュラとマンダリン・オリエンタルの両アジア系だ。
「アジア系のホテルは宴会場のオペレーションがしっかりしている。大型の宴会場はつくらないだろうが、中小の宴会場を効率的に運営するだろう」とホテルグランパシフィックメリディアンの林八郎総支配人は予測する。フォーシーズンズホテル椿山荘東京の鈴木義朗マーケティング支配人も、「ペニンシュラは宴会場を充実させるに違いない」と踏んでいる。
大改修に着手する帝国ホテルは、今後東京に出店する外資系ホテルの客室だけではなく、宴会場や料飲施設に関しても情報収集に注力することになるだろう。
著名な英国人デザイナーを起用
帝国ホテルは、大改修のデザイナーに英国人のジュリアン・リード氏を起用した。同氏はロンドンのザ・レインズボローや、ベルリンのホテル・アドロンといった超高級ホテルの大改修でも実績がある。
客室の改修については、今年12月に客室の最上階である16階から着手し、それ以降は半期ごとに下の階に移動し、2008年度上期に6階までを完了する予定。16階部分は、レギュラールームを12室減らし、スイートを5室増やすなどのリニューアルを行う。
来年1月〜4月には、17階にあるブフェレストランとラウンジを改修し、4月末にリニューアルオープンする。ほかのレストランや宴会場、さらにメインロビー、調理場についても、2008年度までに順次改修を実施してゆく計画だ。
「外資系五ツ星ホテルvs帝国ホテル」――。それは、「2007年問題」の結果を大きく左右する競争になるだろう。同時に、その競争を通じて、“メード・イン・ジャパン”のサービス業が真価を問われることになる。
■関連記事
「サービス大国への道」(第1回)〜「ホテル業界の2007年問題」が意味するもの
■永井 弘(ながいひろし)
慶応義塾大学大学院工学科修士課程修了。日経リゾート副編集長、日経イベント編集長などを経て、現在、編集委員室主任編集委員。専門分野はホテル&リゾート、イベント。
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