DDIポケットが仕様公開、PHSの海外展開でKDDIの事業再編にも影響
2003年11月13日
パケット通信とは、データを小さく分割して送受信することで、1つの回線を複数の利用者で共有する技術。DDIポケットは2001年、パケット通信によるPHSの定額制、使い放題の無線ネット接続サービス「AirH"(エアーエッジ)」を開始。これまでに約90万人の加入者を獲得した。
●アジアを中心に普及が加速
アジアを中心とする海外ではPHSの普及に弾みがついている。中国では、今年9月末の推定加入者数が2500万人に達し、年末には3000万人を超える見込み。台湾の加入者数も、昨年末の48万人から今年9月末には70万人に増えた。ベトナム、タイでも既にサービスが始まり、インド、インドネシアなども導入を検討している。
PHSの強みは、携帯電話の数分の1と言われる投資コストの安さ、通話時の音質の良さ、そして第3世代携帯電話にも遜色ないデータ通信の速さなどだ。しかし海外でのPHSの利用比率は、音声通話が9割以上。ネット接続などのデータ通信にはほとんど使われていない。これに対し、DDIポケットではデータ通信の比率が6割と、音声通話の利用を上回っている。
海外では、PHSのコストの安さばかりに注目が集まり、データ通信の強みについてはまだ意外に知られていない。「データ通信の速い第3世代携帯電話が普及すれば、安くても音声通話しかできないPHSは淘汰される」と見る向きが少なくない。PHSをさらに普及させるには、データ通信の比率を高めていくことが不可欠だ。
ところが、それにはネックがあった。実は現行のPHSは、音声通話と、回線交換方式によるデータ通信についてしか標準規格を規定していないのだ。回線交換方式は1回線を1人の利用者が占有するため、数多くの利用者が同時に基地局に接続しようとすると、つながりにくくなる欠点がある。
DDIポケットがAirH"に採用したパケット通信は、回線交換方式の欠点を克服するために開発したものだ。しかし開発を始めた1997年頃は、国内では既にPHSの凋落が始まっていた。「業界各社に標準化を呼びかけても、当時は誰もついてこなかった」(DDIポケットの近義起・取締役技術本部長)。やむなく独自仕様の規格を開発し、AirH"をスタートさせた。
海外のPHS事業者は、回線交換方式より通信効率が高く、日本で実績のあるパケット通信を導入したい。しかし仕様が公開されていないため、できなかった。中国などの複数の通信機器メーカーやPHS事業者が、DDIポケットに仕様公開を求めていた。
●特許料や機器の量産効果も
DDIポケットにとっても悪い話ではない。通信機器メーカーは、公開される仕様に従って互換性のある通信機器を開発できる。しかし現実的には、既にDDIポケット向けに開発済みの機器や部品を使う方が安上がりだ。これらの機器や部品にはDDIポケットが特許を保有する技術が組み込まれており、特許料収入につながる。市場拡大による量産効果で機器の価格が下がれば、一石二鳥だ。
それだけではない。DDIポケットの親会社であるKDDIは、第3世代携帯電話の新サービスで高速データ通信が売り物の「CDMA 1x EV-DO」を今月末から開始する。このため「AirH"との競合が避けられない」(関係者)状況になっている。業界内ではここ1〜2年、KDDIがいずれDDIポケットの売却に動くという観測が半ば公然とささやかれてきた。
しかし今回の仕様公開により、PHSが中国やアジアで一定の地位を確立すれば、特許やノウハウを握るDDIポケットの価値は大きく高まる。仮に売却されるとしても、条件交渉に有利に働きそうだ。(田原 真司)
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