揺れる公団にもう1つ火種--ETCでクレジットカードの不正利用が多発
2003年10月21日
ETCは、料金所に設置されたアンテナと車載器の間を無線でやり取りし、通行料金を徴収するシステム。利用者は、クレジットカード会社が発行する「ETCカード」を車載器に差し込んで決済。高速料金はクレジットカード会社を通じて支払われる。
●不正使用率は通常の10倍
このETCカードの不正使用が急増している。料金の未払いなどでクレジットカード会社が利用を停止しているカードや偽造カードを使って、通行料金を踏み倒す利用者が後を絶たない。ETCカードの不正使用率は通常のクレジットカードに比べて、10倍ほどに跳ね上がるという。これらの通行料金はクレジットカード会社が負担することになる。業界各社は、ETCカードの問題が公になれば不正を助長するため口をつぐむものの、頭を抱えている。
ETCは、料金所付近での渋滞を解消する切り札として、2001年3月に運用が始まった。サービス開始当初は思ったほど利用者が伸びなかったが、今年に入って急激に増加。今年9月までの車載器の搭載件数は累計で161万件を超えた。車載器の価格が下がってきたことや、通行料の前払い割引制度を設けたことでようやく普及が進み始めたところだけに、今回のトラブルが足を引っ張ることになりかねない。
不正利用が多い原因は、ETCカードの不正防止システムに問題があるからだ。ETCでは飲食店など通常の店舗などと違い、決済端末を使ってオンラインで1枚ずつカードをチェックする方式を取っていない。不正カードのデータをあらかじめ蓄積しておき、車が通過するごとにデータと照合する仕組みだ。
ところが、このデータの蓄積容量が圧倒的に不足している。ETCのシステムは不正カードのデータが14万枚程度まで蓄積できるとされる。既にそれ以上の不正カードが出回っており、それらのカードを使えばその場では料金を支払ったふりをして、料金所を通過できてしまう。
ETCは米国やイタリアなどでも実用化されている。日本のシステムは、他国のものに比べて圧倒的に高規格だ。日本の複雑な料金体系や高速道路本線上での利用を想定しているのに加えて、設備の信頼性を重視したからだ。そのためコストが高くなり、車載器の価格に跳ね返る結果になった。そこまで信頼性にこだわったにもかかわらず、肝心の通行料決済の部分に穴があったのではどうしようもない。
●国も公団もまるで他人事
こうした事実に対して、国土交通省は「料金の決済については道路関係公団とクレジットカード会社の契約のため詳細は分からない」と言う。日本道路公団は、「そうしたことが起こっているとは把握してしていない。そのため特に対策も考えていない」と回答した。損害を被るのはクレジットカード会社だからどうでもいいのか、それとも鳴り物入りで始めたETCの無謬性を証明したいのか。いずれにしろ、まるで他人事といった様子だ。
日本道路公団はこれまで、甘い需要予測を基に採算の合わない高速道路を作り続けてきた。藤井総裁が旧建設省の道路局有料道路課長時代に建設を進めた東京湾横断道路(東京湾アクアライン)は、開通時で1日に3万3000台の交通量を見込んでいたが、開通から5年を迎えた2002年度で約1万4000台弱にとどまっている。
不正カードのデータ容量も、高速道路の需要と同様に水増しして考えてくれたら、と皮肉の1つも言いたくなる。そのうえ、問題が起こっているにもかかわらず、国交省も道路公団もその事実さえ認めない。藤井総裁を解任したぐらいでは、国や公団の無責任体質を変えることはできないようだ。(小平 和良)
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